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フィンランドのOL3 間もなく営業運転開始

20 Apr 2023

オルキルオト3号機 ©TVO

フィンランド南西部のオルキルオト原子力発電所で416日、欧州最大級の出力となる3号機(OL3)(欧州加圧水型炉=EPR、グロス出力172kW)が試運転を完了、本格的に発電を開始した。

同国で新規の原子炉が本格稼働するのは、同2号機が1982年に営業運転を開始して以来約40年ぶりのこと。試運転段階で実施した約3,300項目の試験の結果分析が終わり次第、事業者のティオリスーデン・ボイマ社(TVO)はOL3の営業運転開始を宣言する。最初の定期検査は20243月を予定。

TVOによると、フィンランドがエネルギー危機への厳しい対応を迫られている最中に、同機によるクリーンな国産エネルギーが追加されることになる。OL3の投入でオルキルオト発電所は今後、同国における総発電電力量の約30%をカバー。OL3は少なくとも60年間の運転が見込まれている。

TVOのJ.タンフア社長兼CEOは、「OL3により電力価格が安定するだけでなく、フィンランドのクリーンエネルギーへの移行でも重要な役割を果たす」と指摘。同国が電化を進めていくなかで、環境にやさしいOL3の電力はクリーンエネルギーへの移行の切り札になると述べた。

TVOによれば、同機が本格稼働したことでフィンランドは電力の自給がほぼ可能になる。「2035年までにCO2排出量を実質ゼロ化する」との目標を盛り込んだ同国の改正・気候変動法に沿って、CO2ゼロの社会の確立を加速する。OL3の建設プロジェクトが開始された時点で、フィンランドでは原子力を支持する国民の割合が約60%とすでに圧倒的だったが、近年の支持率は過去最高レベルの83%に達している。

OL3の建設工事は20058月、世界で初めて仏アレバ社(現・フラマトム社)製のEPR設計を採用し、同社と独シーメンス社の企業連合が開始した。初号機であるが故に、規制関係文書の確認作業や土木工事等に想定外の時間を費やした。当初の2009年完成予定のスケジュールはこれまでに幾度となく延期されており、建設コストもターンキー契約による固定価格の約30億ユーロ(約4,400億円)が倍以上に増大した。

TVOと前述の企業連合は20183月、工事の遅れにともなう損害の賠償について包括的な和解契約を締結。企業連合側が分割払いで総額45,000万ユーロ(約664億円)をTVOに支払うほか、OL3の完成に必要な人的、技術的資源も提供することになった

その後同機は、約17年間に及んだ建設工事を経て、202112月に初めて臨界条件を達成。翌20223月には、欧州初のEPRとして試験送電を開始した。この時、営業運転の開始時期は同年7月に予定されていたが、その後冷却系で追加の点検作業が必要になったほか、10月にはタービン系給水ポンプの羽根車で数センチ程度のクラックの存在が判明。新たに設計した羽根車への交換等でさらに時間がかかっていた。

EPRに関しては、OL3に続いてフランスのフラマンビル原子力発電所でも200712月、同設計を採用した3号機(EPR165kW)が本格着工した。現在のスケジュールでは、2024年第1四半期の燃料装荷と試運転開始を目指して作業が進められている。

中国でも、広東省の台山原子力発電所12号機(各EPR175kW)は先行していた欧州の2基の作業経験を生かし、世界初のEPRとして201812月と20199月にそれぞれ営業運転を開始している。

また、英国では南西部のサマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所12号機(各UK-EPR172kW)が、それぞれ201812月と201912月から建設中。南東部のサフォーク州でも、サイズウェルC原子力発電所として167kWUK-EPR2基建設する計画が進められており、20227月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は同計画に「開発合意書(DCO)」を発給している。

(参照資料:TVOの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA417日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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