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ポーランドで大型炉とSMRの建設計画が進展

25 Apr 2023

OSGE社の「BWRX-300」建設候補地
©ORLEN Synthos Green Energy

ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)413日、北部ポモージェ県内における同国初の大型原子炉建設に向けて、「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請した。また、同国内で小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は、417日に建設候補の7地点を公表している。

PEJ社の「AP1000」建設計画

気候環境省による「DIP」の発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると正式に確認したことを意味している。建設サイトとなるポモージェ県ルビアトボコパリノ地区の承認やその後の建設許可など、PEJ社が今後様々な行政承認を申請していく上で必要な手続きの大枠としての承認となる。このためPEJ社は今回、原子力施設と関係インフラの開発と実行に関する改正特別原子力法が発効するのに合わせて、このDIP発給の申請書を提出したもの。

ポーランド政府は現在、改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内複数のサイトで100kW級の原子炉を最大6基、合計600万~900kW建設することを計画中。202211月には最初の3基、計375kW分に採用する設計として、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWR設計である「AP1000」を選定した。2026年にも初号機の建設工事を開始し、2033年の完成を目指している。

PEJ社によると「DIP」の申請書には、設置される設備の最大容量や稼働期間、採用設計の詳細など、プロジェクトの諸条件を記した文書が含まれる。また、ポーランドの電力確保に原子炉建設が必須である理由など、プロジェクトとしての正当性を示すことが不可欠の要素。この申請はさらに、20212月に決定した「2040年までのエネルギー政策」など、政府の戦略文書との整合性も要求される。

OSGE社の「BWRX-300」建設計画

一方のOSGE社は、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社と、同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社が50%ずつ出資する合弁事業体(JV)である。SMRのなかでもGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製「BWRX-300」の建設に絞り込んでおり、2030年の初号機完成を目指している。

同社は17日にPKNオーレン社の本部で記者会見を開き、数十の候補地点の中から最も有望な7地点を選定したと発表。具体的には首都ワルシャワ、オストロウェンカ(Ostrołęka)、 ブウォツワベク(Włocławek)、スタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)それぞれの近郊地点、およびタルノブジェク(Tarnobrzeg)の特別経済区である。

今後は、これらの地点でさらなる地質調査を実施し潜在的な可能性を確認、それぞれの地域コミュニティとは予備的な協議を開始する。これらを終えた後、2年ほどかけて最初のSMRの建設可能性を徹底的に分析し、合意が得られた場合にのみプロジェクトの実施判断を下す方針である。

OSGE社によると、SMRへの投資はクリーンエネルギーへの移行を効率的かつ早いペースで進めることができる。最先端の技術を採用しているため最大限の安全性が保証されており、世界では数多くのSMRが都市部やその周辺での建設が計画されている。同社は一例として、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション社が、オンタリオ州内のダーリントン原子力発電所内で「BWRX-300」の建設を計画している事実に言及。同発電所は、同州有数の商業都市で14万人の人口を抱えるオシャワから5kmの地点にある。

なお、OSGE社が建設する「BWRX-300」の最初の複数基に対しては、米国政府の融資機関である米輸出入銀行(US EXIM)が最大30億ドル、国際開発金融公社(DFC)が最大10億ドルの財政支援提供の意思を表明した。17日に拘束力のない声明文である意向表明書(a letter of interest)に署名したもので、既定の輸出取引で申請書が提出された場合に、財政支援を行う用意があることを示している。OSGE社によると、ポーランド国内の主要な3銀行も同様に資金提供を表明している。

(参照資料:PEJの発表資料、OSGE社の発表資料US EXIMの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA417日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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