GFP社 MMR立地点としてチョークリバー研究所の駐車場を選定
16 May 2023
MMR立地点の記念式典 ©CNL
カナダ原子力公社(AECL)とカナダ原子力研究所(CNL)、およびエネルギー・プロジェクト企業のグローバル・ファースト・パワー(GFP)社は5月12日、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が開発した「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」実証炉の立地点として、AECLチョークリバー研究所のスタッフ用駐車場を選定したと発表した。
同駐車場はMMR立地用に再整備される予定で、GFP社は研究所構内で提供されている電力や水などのインフラを引き続き活用できると強調。今後、規制上の要件確認などの手続きを経る必要があるが、CNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEOは、「原子力関係の様々な最新技術に活力を吹き込んできたチョークリバーで、この地点を選択したことは歴史に刻まれる」と指摘している。
USNC社のMMRは、熱出力1.5万kWで電気出力は約0.5万kW。第4世代の小型モジュール式高温ガス炉(HTGR)で、シリコン・カーバイドで層状に被覆されたウラン燃料粒子を燃料に用いる。20年の運転期間中に燃料交換する必要がなく、いかなる事故シナリオにおいても物理的な対応なしですべての熱が受動的に環境中に放出されるという。
チョークリバー研究所はオンタリオ州に位置しており、AECLの委託を受けCNLが管理・運営している。CNLは2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」のなかで、2026年までにチョークリバーでSMR実証炉を建設するという意欲的な目標を設定。2018年4月には「CNL管理サイトにおけるSMR実証炉の建設・運転提案」を募集し、GFP社を含む4社の提案を選定した。CNLはまた、SMR開発を支援するコスト分担方式の「カナダ原子力研究開発イニシアチブ(CNRI)」を2019年に組織し、同年11月にUSNC社を初回の支援対象の一つに選定している。
GFP社は、オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNC社が設立した合弁事業体。同社は2019年4月、チョークリバーでのMMR建設に向けて、SMR開発プロジェクトとしては初めて、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。チョークリバーでのMMR建設は、基幹送電網に接続できない遠隔地域や、鉱山など産業サイトへの電力供給で将来的な適用モデルとなる予定。CO2を排出せずにクリーン・エネルギーを生産できるというMMRの特長は、化石燃料発電所の代替を含む地球温暖化の防止でも有効と考えられている。
今回の発表にともない、AECLとCNL、およびGFP社は、カナダのクリーン・エネルギー実証プロジェクトが新たな段階に進んだことを記念する式典を5月11日に開催。AECLのA. ゴットシュリング副総裁やCNLのJ.マクブリアティ理事長兼CEO、GFP社のJ.ディニング社長兼CEOが地元の議員や産業界幹部らとともに参加した。
GFP社のJ.ディニング社長兼CEOは、「チョークリバー研究所の主要構内全体から今回の地点を選定したので、先進的MMRの優れた適性を実証できる」と表明。遠隔地や産業サイトの脱炭素化でMMRが果たす重要な資質を明確に表していると指摘した。
(参照資料:CNL、AECLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)