南アの国営ESKOM社、傘下のPBMR社の売却先を募集
04 Feb 2020
PBMRで使用する3重被覆層・燃料粒子
©IAEA/ARIS
南アフリカ共和国の国営電力会社ESKOM社は1月31日、ペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の商業化を目指して、かつて設立したPBMR社を売却するため、前日付で同設計の商業化に対する関心表明(EOI)を産業界から募集したと発表した。
南アにおけるPBMR開発計画はすでに中止されているが、小型モジュール炉(SMR)の1つであるPBMRの設計開発・製造・建設技術に加え、PBMR以外でも様々な原子炉設計に利用出来る3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料の製造技術も売却することになったもの。売却先となる企業には、知的財産権保持のため保存整備(C&M)状態にあるPBMR社の株式購入や、関係技術の商業化への投資を求める方針で、これにより市場には無制限の自由オプションが提供されるとESKOM社は強調した。
また、EOIを募集する具体的な目的は、PBMRへの関心の質を厳しく見極める市場調査であり、次のステップとして提案募集(RFO)や情報依頼書の募集(RFI)をかける際、その範囲を特定するためだと説明。提出締め切り日は2月28日となっている。
PBMRは電気出力16.5万kW(熱出力40万kW)の小型ガス炉で、これに加えて750度Cの水蒸気を供給可能な蒸気発生器とで構成される。炉心溶融の心配が無いなど安全性の高さが特長で、大型炉と比べて初期投資が少なくて済むほか、送電線が本格的に整備されていない地域にも適したプラントと位置付けられている。
PBMR社はESKOM社が大株主となって1999年に設立したもので、株式の一部は米国のエクセロン社やウェスチングハウス社が一時期保有。日本の三菱重工業も2001年にガス・タービン発電機のフィージビリティ・スタディでPBMR開発計画に参加したほか、2010年2月には熱出力を20万kWに半減させた実証炉の共同開発を検討することでPBMR社と合意していた。
2010年9月に南ア政府がPBMR開発計画の中止を発表した際、理由として同炉の潜在的顧客や投資パートナーの確保に行き詰まったことや、計画を継続した場合に少なくとも300億ランド(約2,200億円)の追加投資が必要になること、近年の経済不況により開発の優先順位が変更されたことなどを指摘。南ア政府はまた、PBMR計画のその後に関して(1)PBMR社をC&M状態に置き、その資産と知的財産権を保護する、(2)南ア核燃料公社の燃料開発工場で廃止措置を取り、冷却材であるヘリウムの試験施設は密封管理下に置く――などを勧告していた。
(参照資料:ESKOM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月31日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)