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中・東欧でのSMR建設に向け覚書 ルーマニアSNNら

15 Jun 2023

了解覚書の調印式 ©Nuclearelectrica SA

ルーマニアの国営原子力発電会社(SNN社)は613日、ルーマニアを含む中・東欧の全域で、米ニュースケール・パワー社製の小型モジュール炉(SMR)を建設していくため、関係6社間の了解覚書を締結した。

SNN社とともにこの覚書に参加したのは、ニュースケール社とその大株主である大手EPC(設計・調達・建設)契約企業のフルアー社、ルーマニアのエネルギー・インフラ企業E-INFRA社、その傘下のノバ・パワー&ガス社、20217月にニュースケール社のSMR事業に出資参加した韓国のサムスンC&T社(サムスン物産)である。

SNN社は、ルーマニア南部ドゥンボビツア県のドイチェシュテイ(Doicesti)で13年前に閉鎖された旧・石炭火力発電所サイトに、出力7.7kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」設備(合計出力46.2kW)の建設を計画、2028年頃の完成を目指している。E-INFRA社は同石炭火力発電所の所有者である。

今回の覚書の主な目的は、参加企業それぞれのノウハウや経験を集約し、ルーマニア以外の中・東欧地域にも「VOYGR」設備の建設を拡大していくこと。建設工程の中でも特に、プロジェクト立案や許認可手続き、EPC業務、運転管理と保守点検(O&M)、廃止措置、資金調達および地元資源の活用――といった分野を支援する。このような支援のメリット享受を目指す国々で、それぞれのエネルギー・ニーズと条件に則して安全なコンディションでSMRを建設する。

また、エネルギー自給率向上を目指すルーマニアは、米国に次いで2番目にニュースケール社の先進的SMRを建設する国になるが、欧州ではその最初の国となる。そのため同国は、このSMR機器の製造や組み立て、運転員や専門家の教育訓練を支援するハブ(拠点)となり、中・東欧地域におけるこのSMR建設と運転の模範例として後続国を牽引していく方針だ。

SNN社の試算によるとは、ドイチェシュテイのSMR建設プロジェクトでは190人以上、建設工事関係で1,500人以上の雇用が創出される。経済的で安定供給可能なクリーン・エネルギー源への投資で、この地域では数千人規模の雇用が見込まれる。地元コミュニティへの投資や納税等により、ドイチェシュテイとその周辺では産業活動が促進される見通しである。

SNN社のC.ギタCEOは今回のSMR構想について、「エネルギーの供給保証や脱炭素化のニーズに取り組む先例のない国際協力活動だ」と指摘。これにより、立地地域周辺の開発が進展するほか、かつての石炭火力発電所の再利用が促され、社会経済的な複合利益がもたらされるとした。「ルーマニアでは原子力で総発電量の約20%を供給しているが、今回の著名な国際企業との協力を通じて、10年以内に原子力でクリーン・エネルギーの66%を賄いたい」と表明している。

(参照資料:SNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA614日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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