米規制委 実証炉「ヘルメス」の建設許可発給へ
19 Jun 2023
「ヘルメス」の完成予想図 ©Kairos Power LLC
米原子力規制委員会(NRC)は6月15日、ケイロス・パワー社が申請していた同社製「フッ化物塩冷却高温炉(FHR)」の実証炉「ヘルメス(Hermes)」の建設許可について、安全面の評価審査を完了。「建設許可の発給を阻むような安全上の側面は見受けられなかった」と結論付けている。
ケイロス社は米カリフォルニア州の原子力技術・エンジニアリング企業で、「ヘルメス」は最終完成版「KP-FHR」の熱出力を約10分の1に縮小した非発電炉となる。テネシー州オークリッジにあるエネルギー省(DOE)の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」内で建設し、2026年までの完成を目指している。
同社は「ヘルメス」の建設許可申請書を2021年9月と10月の2回に分けてNRCに提出しており、NRCの原子炉安全諮問委員会(ACRS)は同炉の安全面について独自の審査を行った。ACRSは今年5月、その評価報告書をNRC委員長宛てに提出しており、NRCスタッフはこれらの見解に基づき、今回同炉の安全評価文書の最終版を完成させた。
同スタッフは今年9月にも「ヘルメス」の環境影響面について評価声明書(EIS)の最終版を取りまとめる予定で、その後はこれらの報告書に関するNRC委員のヒアリングを実施。委員5名がスタッフの審査結果を妥当と判断すれば、年内にも建設許可が発給されると見られている。
ケイロス社が開発している商業規模の「KP-FHR」は熱出力32万kW、電気出力14万kWで、冷却材としてフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用。燃料にはTRISO燃料[1]ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料を使う予定で、同炉は固有の安全性を保持しつつ電力と高温の熱を低コストで生成可能になるという。
DOEは2020年12月、「先進的原子炉設計の実証プログラム(ARDP)」の対象としてケイロス社の「ヘルメス」を選定した。同プログラムの実施期間である7年間の総投資額は6億2,900万ドルで、そのうち3億300万ドルをDOEが負担し「ヘルメス」を建設。同炉の運転に際しては別途、NRCから運転許可の取得が必要になる。ケイロス社は完成した「ヘルメス」で運転データ等を収集し、2030年代に商業規模の「KP-FHR」建設につなげる方針だ。
また、「ヘルメス」の建設計画に対しては、テネシー峡谷開発公社(TVA)が2021年5月に設計、許認可、建設、運転等で協力すると発表。「ヘルメス」を通じて、ケイロス社が出力調整可能で価格も手ごろな「KP-FHR」を市場に出せるよう協力するとしている。
(参照資料:米規制委の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
脚注
↑1 | ウラン酸化物を黒鉛やセラミックスで被覆した粒子型の燃料 |
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