ノルウェー社 国内でのSMR建設に向けTVOと協力へ
26 Jun 2023
ノルウェーの民間企業であるノルスク・シャーナクラフト社(Norsk Kjernekraft AS)は6月22日、同国初の商業用原子力発電所となる小型モジュール炉(SMR)の建設に向けて、フィンランドのティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のコンサルティング子会社であるTVOニュークリア・サービシズ社(TVONS)から支援を受けるため、基本合意書を交わした。
ノルスク社はまた、SMRの立地可能性調査の実施を依頼してきた国内4つの自治体すべてと、協力協定を締結したことを明らかにしている。
ノルスク社は昨年7月、ノルウェーでSMRを建設・所有・運転することを目的に、同国の民間投資会社Mベスト・グループが設立。ノルスク社は、ノルウェーは今後数十年の間に化石燃料発電から段階的に撤退していくが、これには大規模な代替電源が必要と指摘。ノルウェー社会の電化を進めるにも、原子力のように確実なベースロード電源なしでは不可能とし、SMR計画についてはノルウェーの放射線防護・原子力安全当局に通告済みという。
ノルスク社はその企業戦略として、ノルウェー国民や産業界がクリーンで価格も手ごろなエネルギーを確実に得られるようにすることを目指している。今後は電力多消費産業と協力し、SMRの立地に適したサイトを国内で選定し、国の原子力規制や国際的な基準に準じて許認可手続きの実施準備を進めていく。その際、各段階で国際原子力機関(IAEA)のアプローチを踏襲するほか、資金調達も慎重に検討する方針である。
今回TVONS社と交わした基本合意書で、ノルスク社はTVOが原子力関係で保有する半世紀近いノウハウを活用し、安全・確実な原子力発電所の運転に必要な作業を実施する。TVOはまた、原子力発電所の運転のみならず、子会社のポシバ社を通じて使用済燃料の最終処分場も建設中であることから、ノルスク社はバックエンド分野についてもTVOと協力していきたい考えだ。
ノルスク社はすでに今年3月、英国のロールス・ロイスSMR社と了解覚書を締結しており、将来的に同社製SMRの建設プロジェクトを立ち上げる可能性について協力していくことになった。また、立地点に関しても、ノルスク社はノルウェー海に面した西海岸のアウレ村とハイム村、北極圏のナルビク町およびバレンツ海に面したヴァードー町の自治体からSMR立地可能性調査の実施要請を受けた。このうちアウレ村とハイム村、およびナルビク町については今年4月に、また、ヴァードー町については6月22日に、それぞれ1基以上のSMR建設に向けた技術面や経済面、安全面の立地可能性を共同で調査するため、協力協定を締結している。
今回のTVONS社との協力合意について、ノルスク社のJ. ヘストハンマル会長は、「ノルウェーが石油や天然ガス部門で優れた能力を身に着けた時の教訓に基づき、原子力発電開発も同様のやり方で進めていく」と説明。同社が必要とする原子力関係の経験が豊富な国や企業と協力しながら、ノルウェーにも原子力発電所を建設していくと述べた。
(参照資料:ノルスク・シャーナクラフト社の発表資料(ノルウェー語)①、②、③、④、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月23日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)