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加オンタリオ州 大型炉を建設へ SMRも3基追加

10 Jul 2023

ブルース・パワー社で大型炉計画への支援を約束するオンタリオ州のT.スミス・エネ相 ©Bruce Power

カナダのオンタリオ州政府は75日、州内で約30年ぶりとなる大型炉(最大480kW分)をブルース原子力発電所で建設するため、ブルース・パワー社と開発前段階の準備作業を開始すると発表した。また、ダーリントン原子力発電所で計画している小型モジュール炉(SMR)の建設についても、追加で3基建設する方針を表明。州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と、具体的な計画の立案や許認可手続きに向けた作業を開始したことを7日付で明らかにした。

同州では2000年代、ブルース・パワー社とOPG社が既存のブルース、ダーリントンの両原子力発電所における増設計画や複数の新規サイトで建設計画を検討していたが、2009年~2013年までに両社はこれらすべての計画を凍結。カナダ原子力安全委員会(CNSC)にサイト準備許可(LTPS)申請の取り下げを要請した上で、既存炉の大規模改修工事を開始していた。

今回、大型炉の建設準備を開始した理由として、州政府は州内で進展する電化と、それにともない2030年代以降に増加が見込まれるクリーンで信頼性の高い電力への需要、および同州の人口増加と安定した経済成長に対応するためと説明。また、同州の独立系統運用者(IESO)がこの需要増への対応策として、原子力のように10年以上のリードタイムを必要とする発電資産の計画立案と立地、環境影響評価といった作業を開始するよう同州に勧告したことを挙げた。

IESOが昨年公表した報告書「脱炭素化への道筋(P2D)」によると、同州がCO2排出量の削減目標を達成しつつ電力需要の増加に対応するには、2050年までに州内の発電設備容量を8,800kWに倍増する必要がある。州内の総発電量の約50%を賄う原子力については、ベースロード電源として1,780kWの設備が追加で必要だと予測している。

こうした背景から、ブルース・パワー社が今回、ブルース発電所サイトでの原子炉増設について連邦政府の承認を得るため、環境影響評価(IA)や関係コミュニティとの協議を開始する。大型炉のIA実施プロセスについては、連邦政府の環境影響評価庁(IAAC)が全体的な責任を負っているが、オンタリオ州政府は承認手続きにおける重複を排除するなどして効率性を高め、クリーンなエネルギー源の建設プロジェクトが速やかに進められるよう連邦政府と協力していく考えだ。

また、開発前段階の準備作業には、複数の先住民コミュニティとの協議や一般国民からの意見募集などが含まれるため、完了まで数年を要する見通し。周辺環境や国民に対する新たな原子炉の影響を検証することにより、サイトの適性を適切に評価することになる。

ダーリントンで4基のSMR建設へ

ダーリントン発電所ではOPG社が20128月、大型炉の増設(最大4基、480kW)用としてCNSCから「サイト準備許可(LTPS)」を取得した。大型炉計画を中止した後、同社は同じ場所でSMRを建設する計画を進めており、CNSCに要請して202110月にこのLTPS10年更新。同年12月には、「ダーリントン新規原子力開発プロジェクト(DNNP)」に採用する設計として、3つの候補SMRの中からGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の「BWRX-300」(電気出力30kW)を選定していた。

その後OPG社は、202210月に初号機の建設許可申請書をCNSCに提出しており、2028年第4四半期の完成を目指して準備作業を進めている。オンタリオ州政府は今回、この初号機に3基を追加して合計4基の「BWRX-300」を建設すると表明。これはOPG社が今年1月、GEH社およびカナダで加圧重水炉(CANDU)事業を手掛けるSNC-ラバリン社、建設大手エーコン(Aecon)グループと6年契約で結んだ初号機建設のための協力協定に基づいている。

今後は追加設備についてもCNSCに建設許可を申請し、2034年から2036年までの間に運転を開始する計画だ。

州政府によると、追加の3基を建設する頃には、初号機の建設経験等を通じてコストの削減やスケジュールの短縮方策を適用できるようになる。例として、冷却水の取水や送電網への接続、4基すべての運転を制御可能な中央制御室など、複数ユニットによる共通インフラの活用を挙げた。また、OPG社はダーリントン発電所の改修工事を通じて、大型原子炉の建設プロジェクトを予算内・スケジュール通りに進める知見を培っており、同様のアプローチをSMR建設に適用できると強調している。

(参照資料:オンタリオ州政府ブルース・パワー社GEHの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA76日、7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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