ハンガリー パクシュⅡ期工事の建設準備始まる
12 Jul 2023
地下水遮断壁の建設工事 ©Rosatom
ハンガリー唯一の原子力発電所であるパクシュ発電所(出力約50万kWのロシア型PWR:VVER-440×4基)で、Ⅱ期工事(出力120万kWのVVER-1200×2基)の建設に向けた第一段階の作業として、7月3日からサイトの準備作業が始まった。
パクシュⅡ期工事開発会社が5日付で発表したもので、同プロジェクトを担当する外務貿易省のP.シーヤールト大臣は記者会見で、「建設工事を請け負ったロシアの原子力総合企業ロスアトム社のエンジニアリング部門が、サイトの掘削前に必要となる地下水遮断壁の建設工事を開始した」と表明。国家原子力庁(HAEA)が昨年8月にⅡ期工事の建設許可を発給したことに基づいており、地盤の改良プランと掘削作業についても最終決定に向けた手続きがスケジュール通り進行中である。地下水遮断壁の建設と地盤の改良工事が完了した後は、掘削作業と建設エリアに基礎スラブを敷く作業の準備を開始、8月までに新しい2基分の掘削作業を実施するとの見通しを明らかにしている。
パクシュ発電所の既存の1~4号機は旧ソ連時代に建設され、ハンガリーの総発電量の約5割を供給している。しかし、4基すべてがVVER-440の公式運転期間である30年を満了したことから、これらの運転期間を延長しながら容量の大きいⅡ期工事の5、6号機で徐々にリプレースしていく考えだ。両機の建設工事については、2014年にハンガリーとロシアが政府間協定(IGA)とEPC(設計・調達・建設)契約を含む主要な3契約を締結。総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆5,400億円)を、ロシア政府から低金利融資で賄う計画である。
2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した後、ハンガリー政府は建設プロジェクトの実施を大幅に加速すると表明しており、J.シューリ無任所大臣が負っていた同プロジェクトの関係責任をすべて外務貿易省に移管した。今年4月になると、ハンガリーはロシアと2014年に結んだ資金調達関係のIGAとEPC契約が一部修正されたことを欧州委員会(EC)に伝えたものの、詳細は未公開。パクシュⅡ開発会社の今回の発表によると、ECがこの修正を承認したのに続き、ロシア政府も2~3日中にそれらの修正事項を承認する見通しである。外務貿易省のシーヤールト大臣は、「5、6号機はハンガリーのエネルギー供給を長期的に保証するものであり、今後も建設作業を制限するような制裁措置には決して同意しない」と述べ、その重要性を強調している。
今回始まった地下水遮断壁の建設工事については、HAEAが昨年5月に許可を発給していた。全長2.5km、厚さ1mというこの壁は、Ⅱ期工事の2基を地下からカーテンのように囲む形で、深さ最大32mの地点に設置される。作業ピットに侵入する地下水を最小限に制御する一方、壁の外側の地下水が一定レベルから下がらぬよう維持する役割も担っている。この壁の建設作業と並行して、サイトでは補助建屋や事務棟、コンクリート・プラント、倉庫等の建設準備も進められている。
(参照資料:パクシュⅡ開発会社、ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)