仏製SMR 建設に向け予備的許認可手続きが開始
25 Jul 2023
「NUWARD」プラントの完成予想図 ©NUWARD
フランス電力(EDF)は7月19日、小型モジュール炉(SMR)「NUWARD」の建設に向け、予備的な許認可手続きを開始した。
EDFは将来、「NUWARD」プラントの最初の運転事業者となることから、今回同炉の安全オプション文書(DOS)を仏原子力安全規制当局(ASN)に提出した。同炉の正式な建設許可申請を行う前に、ASNから初期段階のフィードバックを得るのが目的だ。DOSは、当該原子力施設の安全確保のために採用した技術や設計の特徴、運転とリスク管理関係の主要原則等をまとめた文書で、公開討論等の場で施設の基本的な安全性の考え方や経済面、環境面の影響を説明するのに用いられる。
「NUWARD」は、EDFがフランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)と政府系造船企業のネイバル・グループ、および小型炉専門開発企業のテクニカトム社らと共同開発したSMR。同国で50年以上の経験が蓄積されたPWRをベースとしており、出力17万kWの小型PWR×2基(合計出力34万kW)で構成される。
「NUWARD」の建設を通じて、EDFは世界中の老朽化した石炭や石油、天然ガスの火力発電所をリプレースするだけでなく、高圧送電網から外れた遠隔地域の需要に応えるとともに、水素製造や地域熱供給、脱塩への応用も支援していく。EDFは今年3月、同炉の開発を担当する企業として100%子会社のNUWARD社を設立しており、基本設計と予備的許認可手続きの実施に向けた作業を開始。2025年からは詳細設計と正式な許認可手続きに入る予定で、2030年には国内で実証炉の着工を目指している。
「NUWARD」の開発には、ベルギーの大手エンジニアリング企業のトラクテベル社も協力しており、同社は2022年5月、EDFのエンジニアリング・センター(CNEPE)から同炉のタービン系やBOP(主機以外の周辺機器)の概念設計調査を受注。今年6月には、「NUWARD」開発への協力を強化・延長するため、NUWARD社と枠組み協定を締結している。
EDFが今回DOSをASNに提出したことについて、NUWARD社のR.クラッスー社長は「『NUWARD』の開発を確固たるものにする上で、ASNの評価や勧告は欠かせない」と指摘。「世界のクリーン・エネルギーへの移行を当社が主導し、欧州SMRの評価基準になるという当社戦略の一環として『NUWARD』のモデル・プラントを仏国内で建設、その性能と競争力を実証する」と述べている。
EDFはこれと同時に、複数の国でSMRを建設する考え。SMRの許認可手続きについては、欧州各国が規制環境の整備を加速しつつ国際間で調整を図れるよう、ASNが2022年6月、フィンランド、チェコの規制当局と共同で「NUWARD」の規制審査を行うと発表した。この審査は、欧州でSMRの規制条件調整に向けた初期段階のケーススタディになるとしている。
(参照資料: NUWARD社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)