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SMR搭載船舶の運航は海運業に恩恵

28 Jul 2023

貨物船にSMRを搭載した場合の断面模型図 ©ABS

米国船級協会(ABS)は724日、小型モジュール炉(SMR)など先進的原子炉技術が海運業にもたらす恩恵についての調査結果で、載貨量の増量やCO2排出量の削減など大きな可能性が判明したと発表した。

ABSは船体への装備の取り付け工程や取り付けられた機器の状態等を検査し、船級登録する機関。米エネルギー省(DOE)から、先進的原子炉を民間商船に搭載した場合の障害等について研究調査の実施契約を受注したことから、ABSは海運業関係のサービス会社ハーバート・エンジニアリング社(HEC)にこの調査を委託。長さ約6mのコンテナ換算で1.4万個を輸送可能なコンテナ船と、スエズ運河を航行可能な載貨重量15.7万トンのタンカー(スエズマックス船)について、先進的原子炉がこれらの運航や船体設計など、商業面で及ぼす潜在的な影響を調査した。

その結果、鉛冷却高速炉(LFR)(出力3kW)を2基搭載することによって、民間の商用コンテナ船の載貨量が増加し、運航速度も上昇する可能性が高いと結論。また、これらのLFRの運転期間である25年間に、燃料交換は不要だという。

一方、スエズマックス船については、ヒートパイプ冷却型のマイクロ原子炉(出力0.5kW)を追加で4基設置した場合、載貨量は減るものの運航速度が上昇。燃料交換も25年間で1回のみで済むことが判明した。どちらの場合も排出されるCO2の量はゼロになるなど、海運業にもたらされる恩恵は莫大だと強調している。

ABSのC.ヴィエルニツキ会長兼CEOは、「大型商船の効率的な運航やCO2排出量の削減など、原子力がもたらす大きな可能性が今回の調査で明らかになった」と指摘。「SMRや先進的原子炉は、安全性の確保や効率性の強化、コストと廃棄物の削減、核拡散の防止など、これまで原子力を海運業に活用する際に課題となっていた数多くの点に対処することができる」と強調した。

このほか英国では、クリーンで安全な第4世代の先進的原子炉を開発するため20219月に設立された新興企業のニュークレオ(Newcleo)社が725日、イタリア船級協会(RINA)、および同国の大手造船グループのフィンカンティエリ(Fincantieri)社と共同で、海運業でのSMR活用に向けた実行可能性調査(FS)を実施すると発表した。

これに関連し、国際海事機関(IMO) 7月上旬にロンドンで第80回海洋環境保護委員会を開催し、2050年頃までに海運業界の温室効果ガス排出量を実質ゼロ化するため、新たな削減目標値を設定した。このため同FSでは、ニュークレオ社が開発した革新的な小型LFR(出力3kW)のクリーン・エネルギーを大型商船の推進力として活用し、莫大な化石燃料を消費する海運業界の迅速な脱炭素化を探るのが目的となる。

ニュークレオ社によると、同炉では10年~15年燃料交換が不要なため、メンテナンスが非常に容易かつ効率的になる。また、このLFRを大型商船に設置した場合は、事故発生時に海洋生態系を守ることも可能。同社のLFR設計では、原子炉内部の液体鉛が冷たい水に触れると固体化して原子炉を包み込むため、あらゆる放射線を内部に閉じ込めることができる。

RINAのU.サレルノ会長兼CEOは、「船舶燃料の効率化や船体の設計改良、CO2の排出量削減など、原子力ではあらゆる課題の解決が可能だ」と指摘。これに加えて、「SMRであれば海運業における原子力利用の、最も効率的な解決策になる」と説明している。

(参照資料:ABSニュークレオ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA725日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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