米アラスカ州 マイクロ原子炉の導入に向け規制合理化
04 Aug 2023
USNC社が取りまとめたMMR建設のFS報告書 ©USNC
米アラスカ州は7月27日、州内で検討されている複数のマイクロ原子炉利用計画の実現に向けて、これまで主に大型炉を対象としていた関係規制手続の合理化を決定した。
アラスカ州内で原子力施設を建設するには連邦政府と州政府両方の許可が必要だが、民生用原子力施設の安全性については原子力規制委員会(NRC)が各申請書の審査で全般的権限を有する一方、州政府の権限は施設の立地に留まっている。
これまで同州の環境保全省(DEC)は、建設候補地について地元自治体が承認し州議会が建設指定を行った場合に限り、立地許可を発給していた。昨年中に、州議会では関係州法(AS 18.45)を改訂する上院法案(SB 177号)が成立し、M.ダンリービー州知事も署名を済ませたことから、8月から州議会による候補地の指定要件が撤廃された。今後州議会は、自治体が存在しない自治区が候補地となった場合にのみ、立地許可の発給承認を行うことになった。その一方で同法は、申請者に対して立地許可手続きの初期段階から、地元民との協議を義務付けている。
この変更により、地元コミュニティのプロジェクトへの関与が強まり、デベロッパーが遠隔地域に原子力の無炭素な電力を提供する基盤が築かれたと州政府は指摘。ダンリービー知事も、「ディーゼル発電に依存する農村地域では、マイクロ原子炉で電気料金やCO2排出量の削減が可能になるなど、画期的エネルギー源になる」とコメント。「2030年までに、すべての州民が低価格な電力を利用できるようにしたい」と表明している。
アラスカ州では、米空軍省(DAF)がフェアバンクス近郊に位置するアイルソン空軍基地(AFB)で、マイクロ原子炉を試験的に運転するプログラムを進めている。同基地を原子炉の設置点として選定するにあたり、DAFは2020年9月に「関係する情報の提供依頼書(RFI)」を産業界等の関係者に向けて発出。2022年9月には国防兵站局と共同で、「提案の依頼文書(RFP)」を発出していた。DAFは今年中にも、マイクロ原子炉のベンダーを選定してNRCを交えた許認可関係の活動を開始し、2025年に建設工事を始める予定。2027年に試験運転を実施し、10年以内に商業炉を完成させる方針だ。
同州ではまた、電力共同組合の「コッパー・バレー電気協会(CVEA)」が、ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)製マイクロ原子炉「MMR」を中心とする先進的エネルギー・システムの建設構想を推進中である。州内の電気事業者が共同運営するCVEAは、ディーゼル発電所や水力発電所など合計約4万kWの発電設備で同州南東部に電力と熱を供給。2021年の理事会では、高額で価格変動も激しい化石燃料から脱却し、一層クリーンで経済的な電力供給に転換することが戦略計画の目標に掲げられ、2022年9月にはUSNC社との協力により、MMR建設に関する予備的な実行可能性調査を実施中だと発表していた。
CVEAによると、USNC社は今年6月に同調査の報告書をCVEAに提出。CVEAが熱電併給しているグレンナレンからバルディーズにかけて、複数地点で熱出力1.5万kWのMMRを2基、一つの発電設備として建設した場合のコストやリスクを調査した結果、バルディーズ南東部の山岳地帯が建設に適している、などと報告している。
(参照資料:アラスカ州、CVEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)