加テレストリアル社 WH社製熔融塩炉燃料を調達へ
07 Aug 2023
英国にあるWH社の燃料製造工場 ©Westinghouse Electric
カナダのテレストリアル・エナジー社は8月3日、同社製の「小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)」で使用する燃料を将来的に調達するため、同燃料の製造・供給契約を米ウェスチングハウス(WH)社の英国子会社と締結した。
この子会社「スプリングフィールド燃料会社(SFL)」は、英ランカシャー州のスプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場を運営している。この契約の下で両社は、同工場の様々な既存インフラを活用してIMSR用燃料の試験製造プラントを設計・建設する計画だ。
同契約はまた、2030年代に複数のIMSRを稼働できるよう、最終的に商業規模の製造施設建設を想定している。このため、英国政府はこの試験製造プラント建設に「原子燃料基金(NFF)」の中から290万ポンド(約5億2,500万円)の支援を約束。同契約は元々、テレストリアル社とSFL社および英国の国立原子力研究所(NNL)がIMSR用燃料の商業規模の確保に向け、2021年7月に調印した協力契約に基づいていることから、英国政府もこの協力関係を利用して国内エネルギー供給の保証戦略を進めていくとしている。
テレストリアル社のIMSRは熱出力40万kW、電気出力は19万kWで、電力のほか熱エネルギーの供給が可能。使用する熔融塩燃料は、これまで数10年以上にわたり民生用の軽水炉に装荷されてきた「標準タイプ」の低濃縮ウラン[1]U-235の濃縮度が5%以下を熔融フッ化物塩と混合して製造する。同社の説明によると、先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料[2]U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランを使用するのに対し、IMSRは第4世代設計の中でも唯一、標準濃縮度のウランを使用する。
この関係で、同社は2022年11月にこの標準タイプ燃料の梱包方法と国境を越えた輸送について、第三者に依頼して規制面の独自評価を行っている。その結果、これまで既存炉に利用されてきた燃料の梱包方法は、新たな種類の燃料梱包に派生するコンテナの設計や製造、許認可等の面でコストや時間がかからず、IMSRの燃料輸送に適していることが実証された。IMSRを主要な市場に速やかに送り出すという商業的側面でも、有利な燃料選択だったと強調している。
同炉は今年4月、カナダの規制要件に対する適合性の事前審査で、同国の原子力安全委員会(CNSC)が提供している「予備的設計評価(ベンダー設計審査:VDR)」の第2段階を完了。CNSCが「カナダで同炉の商業利用を阻むような根本的障害は見受けられなかった」と結論づけたほか、テレストリアル社も、「VDRは熔融塩を燃料として使う先進的原子炉がクリアした最初の規制審査になった」と指摘していた。
IMSRについては、カナダのアルバータ州政府が建設に向けた検討を進めており、テレストリアル社と同州の州営非営利企業「インベスト・アルバータ(Invest Alberta)社」は2022年8月、同州をはじめとするカナダ西部地域でのIMSR建設に向けて了解覚書を締結している。
(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)