インド 国産SMRの開発も視野に
08 Aug 2023
インド初の100万kW級軽水炉を備えたロシア製のクダンクラム発電所 ©NPCIL
インド政府で原子力等の科学技術を担当するJ.シン閣外専管大臣は8月2日、議会下院における答弁の中で、国産小型モジュール炉(SMR)の開発に向けて、インド政府が諸外国と協力するオプションや法改正を通じて民間部門と協力する方策を検討中であることを明らかにした。
インド原子力省(DAE)は、現在合計出力748万kWの国内原子力発電を2031年までに約3倍の2,248万kWに増強する目標を設定。シン大臣によると、大型炉の建設を通じてこれを達成する方針に変わりないものの、政府はSMR建設の実行可能性や有効性を調査するロードマップの作成に向け、技術面の詳細を検討中である。
同大臣はまた、SMRは産業界の脱炭素化、その中でも電力の安定供給を必要とする産業にとって特に有望なエネルギー技術だと指摘。インドはクリーン・エネルギーへの移行を果たす一助としてSMRの開発方策を検討しており、その一つとして、民間部門やスタートアップ企業が開発に参加できるよう1962年原子力法の条文見直しを実施中だと説明した。
今年5月、インド政府の公共政策シンクタンクでN.モディ首相が会長を務める「インド改革国立研究委員会(NITI Aayog)」は、「エネルギーの移行におけるSMRの役割」と題する報告書を取りまとめた。同シンクタンクは、SMRの国内建設を成功裏に進めるには、民間部門による投資の活用が欠かせないと指摘している。
インドでは現在、安全で環境に優しく経済性も高い原子力技術の開発と、原子力発電所の運転をインド原子力発電公社(NPCIL)が主に担っている。NITI Aayog の結論では、インドにおけるSMRの大規模開発と建設に向けて民間投資を確保するには、技術的に中立でしっかりとした政策の枠組が必要。投資の流れに大きな影響を及ぼす要因として、社会面や環境面のファクター、タクソノミーなどを挙げている。
NITI Aayogの報告書はまた、いくつかのSMR実証プラントを早期に建設する重要性を指摘している。これによりリスクに対する見通しが立てやすくなり、サプライチェーンの形成に弾みを与えるとともに、この業界に投資と安定をもたらせるという。また、SMRの主要特性を考慮して許認可手続きや規制の枠組みを合理化することは、世界的なSMR市場を開拓する上で重要だとした。そして、SMRが地球温暖化の影響緩和で有意な役割を果たせるとしたら、市場に十分浸透して変化を与えられるよう2030年代初頭、あるいはそれより早い時期にSMR初号機を建設するべきだと指摘している。
(参照資料:インド政府の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)