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仏トリカスタン1号機 40年超運転へ

17 Aug 2023

トリカスタン原子力発電所 ©EDF

仏国の原子力安全規制当局(ASN)は810日、運転開始後約40年が経過した国内32基の90kW級(ネット出力)PWRのうち、4回目の定期安全審査が完了したトリカスタン原子力発電所1号機(PWR、グロス出力95.5kW)に対して初めて、運転期間の10年延長を認める決定を下した。629日付で同機に課す追加要件を定めたことにともなうもので、同機が最終的に50年間、安全運転を継続できるよう引き続き監督していく考えだ。

仏国では商業炉の運転期間に規定がなく、国内56基の商業炉すべてを保有・運転するフランス電力(EDF)は環境法に基づいて10年毎に詳細な安全審査を実施し、次の10年間の運転継続で課題となる設備上のリスクへの対応策等を検討。ASNがこれらの対応策を承認し、関係要件がクリアされると判断すれば、次の10年間の運転許可が付与される。

定期安全審査ではまず、「包括的評価段階」で対象炉に共通する事項をレビューした後、「各原子炉に特有の事項」をレビュー。ASN20212月、1970年代~1980年代にかけて運転開始した仏国で最も古い90kWPWRの運転期間を、50年に延長するための諸条件を決定した。対象炉はルブレイエ発電所の4基、ビュジェイ発電所の4基、シノンB発電所の4基、クリュアス発電所の4基、ダンピエール発電所の4基、グラブリーヌ発電所の6基、サンローラン・デゾーB発電所の2基、およびトリカスタン発電所の4基で、この決定によりこれら32基では「包括的評価段階」が完了。2031年までにすべての対象炉で個別の評価を行い、4回目となる10年毎の定期安全審査を終える予定である。

1980年に営業運転を開始したトリカスタン1号機の運転期間は現時点ですでに40年を超えているが、運転開始後39年目の2019年にEDFは同機で定期安全審査を実施している。この審査の一部として、EDFが提案した同機に特有の安全性改善策は20221月中旬~2月中旬までの期間に公開諮問に付され、公開諮問委員会はこれらの改善策に肯定的な見解を表明していた。

ASNはこのような見解や、「包括的評価段階」でASNが下した判断へのEDFの対応策を吟味した結果、運転期間の延長中も同機の安全性を確保することは可能と判断。地震災害のレベルに関する追加要件等をEDFに課している。

ASNはこのほか、2000年代に運転開始した4基の145kW(ネット出力)級PWRN4タイプ)についても、711日に3回目の定期安全審査における「包括的評価段階」の方向性を提示。同審査でEDFが達成すべき目標は、90kW級および130kW級(各ネット出力)原子炉でASNが示した4回目の安全審査の目標と同一のものになる。ASN145kWPWRの「包括的評価段階」の審査を終えてから、運転期間の10年延長にともなう諸条件を決定するとしている。

(参照資料:ASNの発表資料(フランス語)、原産新聞・海外ニュース、原産資料「40 年以上稼働する原子力発電プラント」、およびWNA814日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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