米空軍省 オクロ社製マイクロ原子炉をアラスカに配備へ
06 Sep 2023
アラスカ州のアイルソン空軍基地 ©US Air Force
米空軍省(DAF)の「エネルギーと施設および環境問題担当・空軍次官局(SAF/IE)」は8月31日、アラスカ州のアイルソン空軍基地に設置を計画しているマイクロ原子炉のベンダーとして、オクロ社(Oklo Inc.)を暫定的に選定した。
DAFが進める「マイクロ原子炉パイロット・プログラム」に則して、国防総省(DOD)の国防兵站局(DLA)がDAFとDODを代表して、オクロ社に「発注意向書(NOITA)」を発出。オクロ社はアイルソン基地でマイクロ原子炉の設計・建設と所有・運転を担当し、今後は同炉の建設・運転認可を原子力規制委員会(NRC)に申請する。また、同炉が生産する熱や電力を、30年にわたってDLAに固定価格で販売する長期契約の締結を目指す。
オクロ社が開発したマイクロ原子炉は、燃料としてHALEU燃料[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランを使用する液体金属冷却高速炉「オーロラ(Aurora)」で、電気出力は0.15万kW~5万kW。同社によると、燃料交換なしで少なくとも20年間熱電供給することが可能である。
DAFのパイロット・プログラムは、2019年に成立した米国国防権限法(NDAA2019)がDODに要求していた事項への対応計画として進められている。DODを構成する3省の一つであるDAFは、要求事項に沿って原子炉の設置点を選定するのにあたり、2020年9月に「関係情報の提供依頼書(RFI)」を産業界等に向けて発出した。2021年にアイルソン基地を設置点として選定した後は、2022年9月にDLAと共同で設置原子炉の「提案依頼書(RFP)」を発出しており、今後は2023年中にベンダーを確定しNRCを交えた許認可関係の活動を開始する。その後、2025年に着工して2027年末までに試運転を開始するなど、NDAA2019の要求通り10年以内にマイクロ原子炉を完成させる方針である。
SAF/IEはマイクロ原子炉について、「固有の安全性を有する無炭素エネルギー源であり、炉心の過熱を防ぐために、変化する条件や需要を自動的に調整する能力を備えている」と指摘。「送電網から切り離された場所でも発電が可能なだけでなく、CO2の削減にも貢献するなど、重要な国防インフラへの電力供給源としては有望だ」と評価している。
DODでエネルギーと施設および環境の問題を担当するB.オーウェンズ国防次官補は、DAFによる今回の発表について、「米国の国益に資する国産技術の開発促進にDODがどのように投資し続けていくか示したもの」と指摘。「国産の先進的原子炉をさらに多くの地点で建設し、軍事施設に対する電力供給と内部設備の信頼性が一層確保されるよう、プロジェクトの進展を絶えず注視し、国防関係の他の省とも協力していきたい」と述べた。
オクロ社のJ.ドワイトCEOも、「国家の安全保障を強化しつつCO2の排出量を削減し、軍事施設の強靭性を増強する最前線に立てることを誇りに思う」と表明している。
(参照資料:SAF/IE、オクロ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン |
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