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ハンガリー パクシュⅡ期工事の準備作業が進展

07 Sep 2023

6号機用ピットの掘削作業 ©Paks II. Ltd.

ハンガリーでパクシュ原子力発電所Ⅱ期工事(出力120kWのロシア型PWRVVER-1200×2基)の建設プロジェクトを進めているパクシュⅡ開発会社は95日、サイトでの準備作業として5号機用ピットの地盤を深さ5mまで掘削したのに続き、6号機用の地盤掘削も開始すると発表した。

同プロジェクトは今後、建屋の建設や機器の製造など建設工事の主要段階に移行。プロジェクトを担当している外務貿易省のP.シーヤールト大臣は、「2030年までに建設プロジェクトを完了するという現行目標の達成は可能だ」と強調している。

ハンガリーでは、旧ソ連時代に建設されたパクシュ原子力発電所の4基(各VVER-440、出力約50kW)で総発電量の約5割を供給している。これらがすでに公式運転期間の30年を超過したことから、同国は運転期間を延長しながら容量の大きいⅡ期工事の56号機に徐々にリプレースしていく方針。シーヤールト大臣は、同発電所の拡張はハンガリーの長期的なエネルギー供給を保証する重要要素であり、総発電量の約70%も供給できるとしている。

両機の建設工事については、2014年にハンガリーとロシアが政府間協定(IGA)を結んだほか、EPC(設計・調達・建設)契約を含む主要な3契約を締結した。総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約15,800億円)がロシア政府の低金利融資で賄われることになったが、両国政府は今年4月、IGAEPC契約の資金調達関係項目を一部修正したと欧州委員会(EC)に伝えている。

修正内容については明らかにされていないが、建設工事を請け負ったロシア国営の総合原子力企業ロスアトム社によると、ECがこの修正を承認したのに続いて両国も818日付で改訂契約に調印。これを受けて、パクシュⅡ開発会社は建設工事が主要段階に移行したと公式に宣言している。

ロスアトム社のエンジニアリング部門であるアトムストロイエクスポルト(ASE)社も、821日に建設サイトで本格工事を開始。ハンガリーの請負企業が6号機用ピットの掘削準備を始めたほか、別のハンガリー企業が地下水遮断壁の作業を継続しつつ、地盤の整備作業を開始したことを明らかにした。

6号機用ピットの地盤は、安定性確保の観点から部分的に地下23 mの深さまで掘削を予定しており、総掘削面積はサッカー・コート4面分に相当する。ロスアトム社の予想では、取り除く土砂の総量が約100m3に達するため、3040台のトラックを動員しているが、この作業は今秋の終わり頃までかかる見通しである。

一方、地下水遮断壁の建設は今年7月、建設サイトの準備作業開始とともに始められており、パクシュⅡ開発会社は全長2.5 kmとなる遮断壁のうち、これまでに0.7 km 分が完成したと表明。このほかロシアでは、原子炉圧力容器の製造も始まっている。

(参照資料:パクシュⅡ開発会社ハンガリー政府ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA96日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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