米規制委 濃縮度6%の試験用燃料集合体の装荷を承認
04 Oct 2023
©Southern Nuclear
米国のサザン・ニュークリア社は9月28日、ジョージア州で運転するA.W.ボーグル原子力発電所2号機(PWR、121.5万kW)に、U235の濃縮度が最大で6%という次世代型事故耐性燃料(ATF)の先行試験用燃料集合体(LTA)を装荷する計画について、米原子力規制委員会(NRC)から8月1日付で承認を得ていたことを明らかにした。米国の商業炉で、濃縮度5%を超える燃料の装荷が認められたのは今回が初めて。
同ATFは、ウェスチングハウス(WH)社が燃焼度の高い燃料で発生エネルギーの量を倍加し、商業炉の現行の運転期間18か月を24か月に延長することを目指した「高エネルギー燃料開発構想」の下で開発した。サザン・ニュークリア社に対するNRCの現行認可では、燃料内のU235の濃縮度は5%までとなっていたが、今回認可の修正が許されたことから、WH社は今後、米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所(INL)との協力により、先行試験燃料棒(LTR)が各1本含まれるLTAを4体製造。サザン・ニュークリア社とともに、2025年初頭にもボーグル2号機に装荷する計画だ。
WH社はDOEが2012年に開始した「ATF開発プログラム」に参加しており、同社製ATFの「EnCore」を開発中。同社とサザン・ニュークリア社は2022年1月にボーグル2号機への4体のLTA装荷で合意しており、同炉ではWH社の「EnCoreプログラム」と「高エネルギー燃料開発構想」で開発された重要技術が使用される。具体的には、商業炉を低コストで長期的に運転する際の安全性や経済性、効率性を向上させる方策として、酸化クロムや酸化アルミを少量塗布した「ADOPT燃料ペレット」、腐食耐性と変形耐性に優れた「AXIOM合金製被覆管」、先進的な燃料集合体設計の「PRIME」などが含まれる。
一方、米国内で7基の商業炉を運転するサザン・ニュークリア社は、ATF技術を積極的に取り入れる事業者のリーダー的存在として知られており、DOEや燃料供給業者、その他の電気事業者らとともに米原子力エネルギー協会(NEI)の「ATF作業グループ」にも参加。2018年に初めて、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社製ATFのLTAをジョージア州のE.I.ハッチ原子力発電所1号機(BWR、91.1万kW)に装荷した。その後、同炉から取り出されたLTAの試料はオークリッジ国立研究所に送られ、2020年にさらなる試験が行われている。同社はまた、2019年にボーグル2号機にフラマトム社製ATF「GAIA」の先行使用・燃料集合体(LFA)を装荷した実績がある。
NRCの今回の承認について、サザン・ニュークリア社のP.セナ社長は、「米国ではクリーン・エネルギーの約半分を原子力が供給しているため、当社はATFのように画期的な技術を原子力発電所に取り入れ、その性能や送電網の信頼性向上に努める方針だ」と表明。NRCに対しては、「米国商業炉へのさらなる支援として、今回のLTA装荷計画を迅速かつ徹底的に審査してくれたことを高く評価したい」と述べた。
(参照資料:サザン・ニュークリア社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)