チェコのドコバニ増設計画で3社が入札の最終文書提出
01 Nov 2023
ドコバニ原子力発電所 ©CEZ
チェコの国営電力(CEZ社)は10月31日、ドコバニ原子力発電所(ロシア型PWR×4基、各51万kW)で建設するⅡ期工事の最初の1基となる5号機について、100%子会社のドコバニⅡ原子力発電会社(EDU Ⅱ社)が大手ベンダー3社から入札の最終文書を受領したと発表した。
2022年3月に始まったこの入札には、EDU Ⅱ社の安全・セキュリティ面の資格審査を通過した米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)が参加。3社は同年11月末に最初の入札文書を提出しており、ドコバニ6号機とテメリン原子力発電所(ロシア型PWR×2基、各108.6万kW)の3、4号機についても、法的拘束力を持たない意向表明として増設を提案している。
これらの原子炉に採用する炉型として、WH社は中国と米国ですでに商業炉が稼働している120万kW級PWRの「AP1000」を提案。EDFは、中国で稼働実績があり欧州でも建設中の「欧州加圧水型炉(EPR)」について、出力を120万kW級に縮小した「EPR1200」を建設するとした。また、CEZ社のウェブサイトによると、KHNP社はアラブ首長国連邦(UAE)に輸出実績のある140万kW級PWR「APR1400」の出力縮小版、「APR1000」を提案したと見られている。
EDU Ⅱ社は今後、国際原子力機関(IAEA)の勧告事項に基づき設定した評価モデルで、各社の提案を技術面や商業面から評価し、報告書を産業貿易省に提出する。チェコ政府としてこれらのうち1社を最終決定した後は2024年中に契約を締結。2036年に試運転の準備が整うよう、建設プロジェクトの計画文書を作成する計画だ。
同社は増設計画におけるその他の関係業務も進めており、2019年9月に環境省が増設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的な評価を下した後、2020年3月にⅡ期工事の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請した。5、6号機は既存の4基の隣接区域に建設されることになっており、SUJBは翌2021年3月に同許可を発給している。
WH社の発表によると、米国政府は同社とベクテル社の企業連合がこの増設計画を落札できるよう、全面的にサポートする方針である。チェコ駐在のB.サベト米国大使は「エネルギーの戦略的供給保障面から見て、米国の技術は地球温暖化に対抗可能な、信頼できるクリーン・エネルギー源を提供するだけでなく、チェコの原子力サプライチェーンで数千人規模の雇用を創出する可能性がある」と指摘、米国とチェコの双方にメリットがあるとした。WH社はまた、チェコの原子力産業界とは約30年前から協力関係にある点を強調。ロシア型PWR(VVER)用の原子燃料を製造できる西側諸国で唯一のサプライヤーとして、VVERが稼働するドコバニとテメリンの両発電所に2024年から原子燃料の供給を開始するとしている。
EDFは今回、「子会社であるフラマトム社のノウハウと工業技術力により、原子炉系統の機器や計装制御(I&C)系を提供できる」と表明。タービン系統に関しては、低速タービン「アラベル」の開発企業である仏アルストム社を米GE社が2015年に買収したことから、EDFと長年パートナー関係にあるGEスチーム・パワー社が同タービン付きのものを供給する。また、2022年6月にプラハに設置したEDFの原子力支部を拡張し、チェコのサプライヤー企業約300社との長期的な協力に向けた調整活動を行うほか、EDFが後援する「チェコ・フランス原子力アカデミー」が10月に正式開校したことから、チェコにおける原子力人材の育成を支援するとしている。
(参照資料:CEZ社の発表資料①、②、WH社、EDFの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)