米ニュースケール社のSMR初号機建設計画が打ち切り
10 Nov 2023
ニュースケール社のSMR発電所完成予想図 ©NuScale
米国のユタ州公営共同事業体(UAMPS)とニュースケール・パワー社は11月8日、エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所(INL)でニュースケール社製小型モジュール炉(SMR)の初号機建設を目指した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を打ち切ると発表した。
UAMPSの100%子会社であるCFPP社が進める同プロジェクトでは、電気出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた発電設備「VOYGR-6」(46.2万kW)で、最初のモジュールを2029年までに完成させることを計画。これに向けて、CFPP社は今年の7月末、建設・運転一括認可(COL)申請の最初の部分となる「限定工事認可(LWA)」を米原子力規制委員会(NRC)に申請しており、2024年1月にはCOL申請の残りの部分を提出するとしていた。今回の発表で両社は、プロジェクトの継続に十分な資金が得られる可能性が低いことが判明したと述べており、協議の結果、最も賢明な判断としてプロジェクトを打ち切ることで合意したと説明している。
ニュースケール社は2020年9月、出力5万kWの「NPM」について、SMRとしては初となる「標準設計承認(SDA)」をNRCから取得しており、2023年1月には「設計認証(DC)」を取得した。同じ月に同社は、出力7.7万kWの「NPM」を6基備えた設備についてもSDAを申請したが、NRCは同社に補足資料の追加提出を要求。今年3月から補足資料を必要としない部分について安全関係の審査を開始したものの、同申請を正式に受理したのは7月末のことである。SDA審査はA~Dまで4フェーズで構成されているが、現時点ではニュースケール社からの資料提出待ちの部分が多く、最初のフェーズAも完了していない。
UAMPSは、米国西部7州の電気事業者約50社で構成される公共電力コンソーシアム。域内の高経年化した化石燃料発電所を原子力等のクリーン・エネルギーで段階的にリプレースし、クリーンな大気を維持するという独自の「CFPP」を2015年から推進していた。2016年2月にDOEから、INLにおけるSMR建設を許可されており、2020年10月には、NPMを複数基備えた発電設備の建設・実証を支援する複数年の補助金として13億5,500万ドルを獲得している。
CFPP社の「VOYGR-6」の建設については、ニュースケール社が2022年12月に最初の長納期品(LLM)製造を韓国の斗山エナビリティ社に発注。原子炉圧力容器(RPV)の上部モジュールを構成する大型鍛造品や蒸気発生器の配管等を調達するとしていた。
ニュースケール社のJ.ホプキンズ社長兼CEOは今回、「過去10年以上にわたるCFPPのお陰で、当社の技術は商業炉の建設段階まで到達した。今後は国内外のその他の顧客とともに当社の技術を市場に届け、米国における原子力製造基盤の成長や雇用の創出に貢献したい」と述べた。UAMPSのM.ベイカーCEOは、「当社も含めた関係各位のCFPPに対するこれまでの努力を思うと、この決定は非常に残念だが、CFPPで我々は多くの貴重な教訓を学んでおり、UAMPS会員の将来のエネルギー需要を満たすため、今後の作業を進めていく」としている。
米国内ではこのほか、ウィスコンシン州のデーリィランド電力協同組合が2022年2月、供給区内でニュースケール社製SMRの建設可能性を探るため、了解覚書を締結した。国外では、ポーランドの鉱業大手のKGHMポーランド銅採掘会社が2022年2月、「VOYGR」設備の国内建設に向けてニュースケール社と先行作業契約を交わしている。また、ルーマニアでは同年5月、南部のドイチェシュティで「VOYGR-6」を建設するため、国営原子力発電会社とニュースケール社、および建設サイトのオーナーが了解覚書を結んだ。
(参照資料:ニュースケール社、UAMPSの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)