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加ブルース・パワー社 増設に向け情報提供依頼を産業界に呼び掛けへ

27 Nov 2023

オンタリオ州のT.スミス・エネルギー大臣
©Bruce Power

カナダ・オンタリオ州のブルース・パワー社は1122日、ブルース原子力発電所(CANDU炉×8基、各80kW級)における最大480kWの大規模増設と州経済の発展に向けて、2024年初頭に「関係情報の提供依頼書(RFI)」を発出し、産業界等に協力を求める方針であることを明らかにした。

増設計画で採用する炉型の評価が主な目的で、同社はその一環として地元の産業界やビジネス界のリーダー、製造業や電気事業関係の労働組合幹部など、11名で構成される諮問委員会も設置。同社が様々な原子炉について技術面の評価を行う一方、諮問委員会は地元経済の発展や関係サプライチェーン、労働力など、オンタリオ州における原子力産業発展の長期的な見通し等を審査する。同社はまた、増設の社会的な影響を評価(IA)するプロセスも技術評価と並行して行う計画で、州営電力のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社や独立系統運用者(IESO)との協力により、州内の他の地域での原子炉建設についても実行可能性調査(FS)を実施する。FSRFIで得られた情報を活用し、2024年末までに完了させる予定である。

オンタリオ州政府は今年7月、州経済の成長に必要な電力を長期的に確保する構想「Powering Ontario’s Growth」を公表した。同州の経済成長のほか、地球温暖化の影響緩和や州内の電化にも資するクリーンで安価な電力を増産するため、ブルース・パワー社や州内の独立系統運用者(IESO)と協力し、同発電所で増設計画の実施前段階の準備作業を開始すると発表。同じく州内のダーリントン原子力発電所では、小型モジュール炉(SMR)初号機に3基を追加建設すると表明していた。

10月には、同社はブルース発電所で前記のIAプロセスを実施する計画や、将来的なサイト準備許可(LTPS)の申請方針もカナダ原子力安全委員会(CNSC)と連邦政府のカナダ環境影響評価庁(IAAC)に正式に連絡。その際、この増設計画を「ブルースC原子力発電所計画」と呼称している。

今回のRFI呼びかけは実施前段階における準備作業の一部であり、10月にこの増設計画への「関心表明(EOI)」の募集を開始したのに続く措置。「Powering Ontario’s Growth」でブルース発電所が担う役割を下支えするため、ブルース・パワー社は以下の5原則を表明した。

  • 既存の8基で、クリーン・エネルギーや医療用アイソトープの生産を2064年以降も続けられるよう、運転期間を延長する。
  • 運転期間の延長プログラムと2030年までの投資計画を通じて、2030年代に既存炉8基のピーク時におけるネット出力を、大型炉1基分増強して合計700kWとする。
  • ブルース発電所で480kW追加する可能性評価のため影響評価(IA)を実施し、いかなる決定を下す際も、これに先立ち先住民コミュニティや地元3郡の地域、および一般市民を対象にオープンで透明性のある協議を行う。
  • 堅実な技術評価作業を踏まえ、将来の意思決定やマイルストーンに際し健全な助言を提供する。
  • 地元経済の発展とそのための協力、地元産業への技術移転、地元におけるサプライチェーンと労働力の活用を、農村部の開発においては特に、重要な優先事項と位置づける。

同社の説明によると、ブルース発電所では「主要機器の交換 (MCR) プロジェクト」が予算の範囲内でスケジュール通り順調に進んでいることから、「Powering Ontario’s Growth」構想でも新規建設評価の対象に選ばれた。カナダ最大の原子力発電所における同社の安全運転実績や、信頼性の高いクリーンな電力の供給実績、複数の送電線を備えた広大な敷地、コスト面の競争力が高く評価されたことを強調している。

(参照資料:ブルース・パワー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA1121日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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