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仏フラマトム社 英国で燃料製造施設の建設を計画

01 Dec 2023

合弁事業体の設立で合意したフラマトム社とUSNC社の幹部 ©Framatome

フランスのフラマトム社は1129日、英国内で現在建設中、および今後新たに建設される原子力発電所向けに、原子燃料の製造施設を英国で建設すると発表した。同社はまた、第4世代の先進的原子炉向け燃料を製造するため、1128日に米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC社)と合弁事業体を設立することで、正式に合意している。

フラマトム社はすでに英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)や、親会社であるEDFの英国法人EDFエナジー社との協力により、既存の原子力発電所や跡地の中から建設候補地として選定したサイトの評価作業を実施中。2024年には原子力規制局(ONR)のガイダンスに基づいて、サイトとしての妥当性を詳細に調査するほか、許認可手続き前の予備調査に入る方針だ。この作業については、DESNZから資金提供を受けている政府外公共機関の 原子力廃止措置機構(NDA)も協力。NDAは英国内で閉鎖済み原子力発電所の廃止措置や管理などを担当している。

EDFエナジー社は201812月から、イングランド南西部サマセット州でヒンクリーポイントC原子力発電所(フラマトム社製・欧州加圧水型炉:EPR×2基、各172kW)を建設中のほか、イングランド南東部のサフォーク州では、サイズウェルCSZC)原子力発電所(EPR×2基、各167kW)の建設を計画している。一方、英国政府は将来的なエネルギー供給保障強化の一環として、革新的な小型モジュール炉(SMR)を2030年代半ばまでに国内で複数建設するため、支援対象とするSMRの選定コンペを実施中。今年10月には、SMR開発企業の中から6社を最終候補として発表している。

フラマトム社の今回の原子燃料製造施設建設プロジェクトは、このように新しい世代の原子炉の運転開始に備え、英国での経営規模拡大を目指すという同社戦略の一部。大型PWRや軽水炉方式のSMRにも対応する複数の原子燃料の製造で、英国の将来的な原子力発電開発のみならず欧州全域でのSMR建設を幅広く支援していく考えだ。

米企業とは第4世代の原子炉向け燃料製造へ

フラマトム社とUSNC社が今回設立を決めた合弁事業体は、3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)を商業規模で製造する予定だが、これはUSNC社が開発している第4世代の小型高温ガス炉「モジュール式マイクロ原子炉(MMR)」と、同炉を複数基備えたエネルギー供給システム、およびその他の先進的原子炉での使用を想定したもの。TRISO燃料は、USNC社がMMR用として開発中の「完全なセラミック・マイクロカプセル化(FCM)燃料」の製造に活用される。

USNC社はすでに20228月、FCM燃料のパイロット製造施設(PFM)をテネシー州のオークリッジでオープンした。合弁事業体はこの技術に基づき、2026年にもTRISO燃料の製造と同燃料を使ったFCM燃料の製造開始を計画。このため、フラマトム社は米国で保有している燃料の製造許可に、USNC社のPFMと同じ実証済みの製造プロセスを組み込めるよう、同許可の修正を2024年の夏に米原子力規制委員会(NRC)に申請する予定である。また申請に先立ち、NRCとは事前の協議を実施している。

USNC社のMMRを備えたエネルギー供給システムでは、1kW4.5kWまで様々なレベルの熱出力が設定可能で、コスト面の効率性が高いクリーンで安全な熱と電力を、場所を選ばずにユーザーに提供できるという。カナダでは、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社とUSNC社の合弁事業体であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)社が20193月、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトで2028年にもMMR初号機の運転を開始するため、同国の原子力安全委員会(CNSC)に「サイト準備許可(LTPS)」を申請した。米国ではイリノイ大学が20217月、学内でチョークリバーと同じ時期の運転開始を目指してMMRを建設するため、NRCに「意向表明書(LOI)」を提出している。

(参照資料:フラマトム社USNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA1129日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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