ベルギー 2基の運転期間延長で最終合意
18 Dec 2023
最終合意文書の調印式(=中央はデクロー首相) ©Engie
傘下企業を通じてベルギーの全原子力発電所(計5基)を所有・運転する仏エンジー社は12月13日、これらのうち最も新しいドール4号機(PWR、109万kW)とチアンジュ3号機(PWR、108.9万kW)の運転期間を2035年まで10年延長する計画の諸条件について、ベルギー政府との最終合意文書に調印した。
両機はともに1985年に営業運転を開始しており、40年目となる2025年に閉鎖が予定されていた。今回の合意により、両機は2025年に一旦運転を停止した後、最大20億ユーロを投じてバックフィット作業等を実施。2025年11月の再稼働を目指す。
ベルギーでは2003年に緑の党を含む連立政権が脱原子力法を制定し、既存の原子炉7基(当時)の運転期間を40年に制限するなどして、これらを2025年までに全廃することになった。しかし、2020年に発足した7政党の連立政権は2021年12月、総発電量の約5割を賄っていたそれら7基の代替電源が確保できないことから、7政党の政策協議において、エネルギー供給で必要な場合に限り、ドール4号機とチアンジュ3号機で運転を継続する可能性を残していた。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻が2022年2月に始まったことから、ベルギーを含む欧州各国では天然ガスの調達で苦境に立たされている。同年1月にベルギーの原子力規制当局がこれら2基の運転期間延長を条件付きで認めていたことから、政府は同年3月にこれら2基合計約200万kWの原子力発電設備の運転期間を10年延長し、2035年まで維持する方針を決定。事業者であるエンジー社とは同年7月、運転期間の延長に向けて交渉していくことで合意していた。
その後、2022年9月にドール3号機(PWR、105.6万kW)が、今年2月にはチアンジュ2号機(PWR、105.5万kW)が40年間の稼働を終えて永久閉鎖されたが、政府とエンジー社は2023年1月、ドール4号機とチアンジュ3号機の運転期間延長に関し、法的拘束力を持たない予備的合意案に署名。今年6月に暫定合意文書を交わした後、7月には枠組合意に達しており、今回はこの合意案の主要原則に基づき以下の事項を定めている。
- 両者の「柔軟な長期運転(LTO)シナリオ」に基づいて、今後両機に16億~20億ユーロ(約2,480億円~3,100億円)を投資、2025年11月の再稼働を目指して最善を尽くす。
- 政府とエンジー社の折半出資により、これら2基専用の法的裏付けのある組織を設置、同組織が2基の管理にあたる。
- 両者間でバランスの取れたリスク配分が行われるよう、両機が発電する電力の売買には差金決済取引(CfD)を取り入れた経済モデルを活用。CfDの行使価格は連邦原子力規制局(FANC)が設定した安全要件等に基づき、実際にかかるコストを考慮して決定する。2025年に初期の行使価格を設定した後、2035年までの期間をカバーする最終コストを反映させて2028年に行使価格を改定する。
- エンジー社所有の原子炉すべてが排出する放射性廃棄物の管理固定費を、総額で150億ユーロ(約2兆3,300億円)と見積もる。
これらの事項は、欧州委員会(EC)の承認を受けて最終決定する見通しで、関係協議はすでに始まっている。エンジー社のC.マクレガーCEOは、「2基の運転期間延長に向けて政府とのリスク分担を可能にし、放射性廃棄物に関する条項の不確実性を排除する合意文書に署名できたことをうれしく思う」と表明している。
(参照資料:エンジー社(フランス語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月13日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)