英EDFエナジー、既存炉の運転期間延長を計画
16 Jan 2024
トーネス原子力発電所 ©EDF Energy
英国のEDFエナジー社は1月9日、今後3年間で13億ポンド(約2,405億円)を投じて運転中の5サイト計9基の運転期間を延長することを発表した。
EDFエナジー社は、8サイトの原子力発電所を管理している。運転中の5サイト(サイズウェルB、トーネス、ヘイシャムA、ヘイシャムB、ハートルプール)と廃止措置中の3サイト(ハンターストンB、ヒンクリー・ポイントB、ダンジネスB)である。同社は、イングランド南西部サマセット州で、170万kW級の欧州加圧水型炉(EPR)2基構成のヒンクリー・ポイントC(HPC)原子力発電所を建設中であり、南東部サフォーク州のサイズウェルC(SZC)原子力発電所では同じくEPR2基の建設を計画中である。
2009年にブリティッシュ・エナジー社から取得して以降、EDFエナジー社が運転中の5サイトへ投資した総額は、今回発表の13億ポンドと合せると、およそ90億ポンド(約1.67兆円)に達する。2023年の英国の原子力発電電力量は373億kWhであった。2021~2022年にかけての3サイトの原子力発電所(ダンジネスB、ヒンクリー・ポイントB、ハンターストンB)の閉鎖や定期検査による運転停止により、2022年比で15%減少したものの、少なくとも2026年までは原子力発電電力量はこの水準を維持する計画である。この予測は、昨年の予測より40%高いが、2023年3月にハートルプール原子力発電所(各AGR、65.5万kW×2基)とヘイシャムA原子力発電所(各AGR、62.5万kW×2基)の運転を2年延長し、現時点で2026年3月まで延長することを決定したことによる。また、ヘイシャムB原子力発電所(各AGR、68万kW×2基)、トーネス原子力発電所(各AGR、68.2万kW×2基)の運転期間延長を目指しており(現在、この4基は2028年3月までの運転を予定)、点検および規制当局の承認を条件として、2024年末までに再度、運転期間を見直す予定である。
サイズウェルB原子力発電所(PWR、125万kW)は、1995年の運転開始時から2,500億kWh以上を発電。運転終了時期となっている2035年以降も、技術的には20年間以上の運転が可能とみられている。EDFエナジー社は、2025年中にこれに関する最終的な投資決定を下す予定。
EDFエナジー社は、5サイトでの運転期間延長により現在の発電量レベルを維持し、エネルギー安全保障を強化、CO2排出量を削減する意向である。HPCやSZCのような大規模な新設計画が実施されることで、5,000人もの長期雇用や、サプライチェーンにおける数千人の雇用も維持される。EDFエナジー社では、2024年に原子力事業全体で1,000人以上の雇用を計画中だ。
今回の投資がなければ近いうちに、サイズウェルBが運転中の唯一の原子力発電所となり、英国の電力需要量に占める原子力発電の割合は13%ではなく、僅か3%となり、天然ガスへの依存度はさらに高まり、エネルギー価格は上昇、大気中のCO2量はさらに増えることになる。
英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは、EDFエナジー社の発表を歓迎しつつも、「運転期間延長は短期的には助けとなるが、閉鎖間近の原子力発電所を巡る中長期的な問題には対処できない。政府が迅速にSZCへの最終投資を決定し、将来にわたるエネルギー安全保障と経済的繁栄をもたらす大型炉から小型炉までさまざまな規模の新しい原子力発電所の計画を策定することが必要だ」と強調した。
EDFエナジー社は閉鎖したAGR炉の燃料取り出し作業にも取り組んでおり、3サイトで2021年半ばから廃止措置の初期段階に入った。ハンターストンB原子力発電所では燃料取り出しが半分以上、ヒンクリー・ポイントB原子力発電所では4分の1以上が終了している。この2サイトの原子力発電所は燃料取り出し後、2026年に長期間の廃止措置のため、原子力復旧サービス(Nuclear Restoration Services:NRS。以前の名称はマグノックス社)に移管される。ダンジネスB原子力発電所は、2023年5月に燃料取り出し作業を開始した。政府との2021年廃炉協定に基づき、EDFエナジー社が燃料取り出しを行い、NRSがその後の長期の廃炉プログラムを管理する。資金は原子力債務基金(Nuclear Liability Fund:NLF)から拠出される。2023年3月末の基金残高は204億ポンド(約3.8兆円)。