原子力産業新聞

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ロシア 鉛冷却高速実証炉の据付工事開始

22 Jan 2024

桜井久子

BREST-OD-300格納容器の下層部分の据付け工事 ©Rosatom

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社が建設中の鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」(電気出力30kW)で117日、鋼鉄製の原子炉ベースプレートと格納容器の下層部分が原子炉シャフトに据付けられた

重量165トン、直径21m以上、厚さ300mmの原子炉ベースプレートは、20229月に2つに分割されて建設サイトに搬入され、組み立てられた。ベースプレートは、原子炉容器内の構造物から基礎部分にかかる荷重を均等にするためのもの。コンクリート打設は20218月に完了しており、遅くとも2027年に運転を開始する予定。

BREST-OD-300は、シベリア西部のトムスク州セベルスク市にある、核燃料製造企業トヴェル社傘下のシベリア化学コンビナート(SCC)で建設中である。20212月、SCCに連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)から建設許可が発給され、同年6月に建設が開始された。設計上固有の安全性を持つBREST-OD-300は冷却材に鉛を使用し、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。同サイト内で建設中のMNUP燃料製造加工施設は2024年中に稼働予定。また、同炉から発生する使用済燃料専用の再処理モジュールを併設し、回収したウランとプルトニウムをMNUP燃料製造施設で新燃料に再加工する。再処理モジュールは2030年に稼働予定である。これら3施設で「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成する。PDECは、ロスアトム社が進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の主要施設である。

BREST-OD-300の主任設計者兼ブレークスルー・プロジェクトチームの設計責任者であるV.レメホフ氏は、「世界初の第4世代の鉛冷却高速炉の据付工事の開始という画期的瞬間を迎えた。従来のVVER炉とは異なり、BRESTは一体型レイアウトを採用。VVERのようなオールメタル構造ではなく、一次系設備を収納する金属製空洞のあるメタル・コンクリート構造。空洞間は建設中にコンクリート充填材で徐々に埋める。BREST炉はサイズが大きく部品単位でしか搬入できず、最終的な組立ては建設サイトでしかできない」と語る。

BREST-OD-300のような高速炉は、従来の熱中性子炉などの燃料再処理からの副産物であるプルトニウムを燃料に使用する。放射毒性の強いマイナーアクチノイドの燃焼消滅も可能。また、ウラン238からプルトニウム239が生成されるが、天然ウランの約99%はウラン238であるため、ロスアトム社は「天然ウランの利用効率が飛躍的に向上する」としている。

ロシアは、ブレークスルー・プロジェクトで、天然ウランなど資源の有効活用を図るとともに、蓄積する使用済燃料や放射性廃棄物を処分するため、閉じた燃料サイクルの確立を目指している。ロスアトム社は熱中性子炉のみならず、運転経験が豊富なナトリウム冷却高速炉(SFR)に加え、鉛冷却高速炉(LFR)の開発を進める。今回の30kWの実証炉の運転は性能確認に重点を置き、10年後には120kWBR-1200LFR)の商業運転を後続させると意気込んでいる。

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