フィンランド 最終処分場のレビュー期限を延長
29 Jan 2024
最終処分場。黄色の矢印は使用済燃料封入プラントの位置を示す。©Posiva
フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月18日、世界初の使用済燃料の深地層処分に関するポシバ社の操業許可申請書への見解提出の期限を2024年末まで延長するよう雇用経済省に要請したことを明らかにした。昨年9月には、当初予定していた2023年末までのレビュー完了は難しいだろうとしていた。
最終処分の実施主体であるポシバ社は2021年12月30日、オルキルオトに建設中の使用済燃料封入プラントと最終処分場の操業許可を雇用経済省に申請した。2024年3月から2070年末までの操業許可を求めるもので、実際の処分事業は2020年代半ばに開始する計画である。操業許可の最終的な判断は政府が下すが、事前にSTUKが処分場の長期的な安全性評価を実施し、雇用経済相に見解を提示することが必要。肯定的な見解であれば、同省が内閣から承認を取り付ける。STUKはポシバ社からの関係資料提出を受け、2022年5月に評価作業を開始した。雇用経済省はSTUKに対し、2023年末までに見解を提出するよう求めていた。
STUKは昨年の第三期(最終)報告書の中で「安全性の評価作業に大きな問題はないが、当初の想定よりも若干ペースが遅れている。審査すべき資料が膨大であり、ポシバ社が当初提出したデータでは十分な評価ができず、ポシバ社によるデータの更新が必要となった。その後の書類の審査に予想以上に時間がかかっている」と言及している。
STUKは、安全性評価の作業に加え、ポシバ社が実施している作業を監督している。その監督項目は、使用済燃料の地上封入プラントへの機器の設置、同機器の試運転、最終処分場で進行中の岩盤工事など。また、最終処分場の保安体制、組織の安全文化、および最終処分事業の開始に向けたポシバ社の準備状況を確認している。
政府は2015年11月にポシバ社に最終処分場の建設許可を発給、2016年12月に総工費約5億ユーロ(約803.5億円)の建設工事が開始された。操業許可が発給されれば、フィンランドで原子力発電所を運転するティオリスーデン・ボイマ社(TVO)のオルキルオト原子力発電所(BWR×2基、各92万kW)とフォータム社のロビーサ原子力発電所(ロシア型PWR=VVER-440×2基、各53.1万kW)から発生した使用済燃料の埋設を開始する。昨年5月に営業運転を開始したオルキルオト3号機(欧州加圧水型炉=EPR、172万kW)の使用済燃料については同一サイトで処分場を拡張し、2090年以降の最終処分を予定する。同処分場は、2120年代までの100年間の操業を見込む。
最終処分の実施主体であるポシバ社は、TVO社およびフォータム社が共同で設立した。同社は2000年、フィンランド南部のユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊を使用済燃料の最終処分場の建設サイトに選定。2004年6月、同地点の地下450m部分の岩盤地質や水文学特性を調査するため、地下研究調査施設「ONKALO」を着工している。「ONKALO」は最終的に最終処分場の一部となる。
最終処分場は地上の使用済燃料封入プラントと地下400~450mに設置される地下施設で構成されており、ポシバ社は2019年6月から封入プラントの建設に着手。2022年5月に完成している。2021年5月には、実際の使用済燃料を収納したキャニスターを定置する最初の5本の処分坑道の掘削工事を開始した。なお、同処分場の100年間の操業期間中に100本の処分坑道が掘削され、全長は約35kmになる予定。1本の坑道の最大長は350m、高さ約4.5m、幅約3.5mであり、各坑道は処分孔の数で変化するものの、平均約30本のキャニスターを定置、約65トンの使用済燃料を収容できるという。