米国防総省、超小型炉の原型炉建設と実証に向けコメント募集
05 Mar 2020
米国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)と国防長官府は3月2日、エネルギー省(DOE)原子力局との連携により、先進的な可動式超小型原子炉の原型炉建設と実証に向けて、環境影響声明書(EIS)を作成すると同日付け連邦官報に掲載した。
EISは国家環境政策法の要件に基づき、計画された活動が周辺住民の健康や環境に及ぼす可能性のある悪影響を軽減、最小化することを目的としている。SCOは同EISでカバーする範囲について、一般からのコメントを同日から4月1日までの期間に募集。それらを斟酌した上でEIS案を作成し、最終的には同炉を建設、様々な実証活動に加えて運転終了後の処分も行うという提案を実行に移す。
SCOの説明によると、DODは世界でも最大規模のエネルギーを消費するユーザーの1つであり、今後の軍事作戦を遂行するにあたり、必要なエネルギー量は大幅に増加する見通し。作戦行動の実施地で配電網への依存を軽減することがDOD設備に求められているが、こうした配電網の多くは、様々な脅威にともない機能停止が長期化しやすく、DODの重要ミッションを「エネルギー供給の途絶」という高いリスクにさらしている。
バックアップ電源としては主にディーゼル発電機が用いられているが、これらは現地での燃料備蓄が限られるほか、母国の新たな防衛ミッション用としては小さ過ぎて持続性と信頼性に乏しい。先進的な原子力発電であれば、エネルギー供給保証や(送電網の一時的機能停止からの)回復力などの点でDODのニーズを満たせるものの、技術面と安全面の仕様を全面的に実証する必要があるとした。
このため、DODが今回提案した超小型炉では、通常運転時や異常時も含めて放射線被ばくを「合理的に達成可能な限り低く」抑えることが必須条件。具体的な仕様は、HALEU(U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)の3重被覆層・燃料粒子「TRISO」燃料を使用する先進的な超小型ガス冷却炉(AGR)となる。
予定している活動としては、同炉の原型炉を候補地となっているDOE傘下のアイダホ国立研究所など2か所で建設するが、1つは既存インフラ施設内部での建設となる一方、もう1つは屋外とする計画。その上で、プロジェクトの対象物質の試験と照射後試験、原子炉の起動時と過渡変動時の試験を行うほか、サイト・バウンダリ内における同炉と専用機器の可動性評価や運転試験も実施する。また、これに付随する活動として、燃料の製造加工や試験モジュールの組み立て、放射性廃棄物と使用済燃料の管理などが含まれるとしている。
(参照資料:3月2日付連邦官報、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)