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米WE社、英国でAP300建設に向けた準備が進展

26 Feb 2024

桜井久子

AP300イメージ図 ©Westinghouse

米ウェスチングハウス(WE)社は2月8日、英国のコミュニティ・ニュークリア・パワー(CNP)社と、WE社製小型モジュール炉(SMR)「AP300」(電気出力30kW)の4基建設で合意したことを明らかにした。英国初の民間出資の建設プロジェクトとなる。

建設予定地はイングランド北東部、ティーズ川北岸にあるノース・ティーサイド地域。経済発展が著しい同地域では、カーボンフリーで信頼性のある電力需要が高まっており、米国のジェイコブズ社などを戦略的パートナーに、2027年までを目標に本プロジェクトのサイト開発を行っている。なお、CNP社は20229月に設立された原子力プロジェクト専門企業で、同社によると、プロジェクト実現のための必要な要素(土地、能力、技術、民間資本による資金調達、地域の需要)は揃っており、10年後のクリーンエネルギー供給を目指すとしている。

今回のプロジェクトについて、WE社は、英国政府が今年1月に発表した「新規原子力プロジェクトの市場参入のための代替ルート(Alternative Routes to Market for New Nuclear Projects)」に関する協議(新型原子力技術に係る民間投資奨励に関する協議)に沿ったものであり、「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」が昨年7月に開始したSMRの支援対象選定コンペへの「AP300」の参加を補完・支援するものと指摘。そのうえで、両社の協力により、同プロジェクトなど複数の建設プロジェクトを通じて、労働力やサプライチェーンなどのローカライゼーションの規模をさらに拡大する考えを示している。

WE社が昨年5月に発表した「AP300」は、同社の「AP1000」技術をベースとした1ループ式の加圧水型原子炉で、2030年代初頭に初号機の運転開始を目指している。なお、WE社は213日、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)に、「AP300」の包括的設計審査(GDA)を正式に申請したことを明らかにした

DESNZWE社のGDA申請書を事前に精査し、「AP300」のGDA開始前の評価基準適合を確認後、原子力規制庁(ONR)が同設計の安全性とセキュリティ面について、環境庁(EA)が環境影響面について、基準適合を評価する。これによりONREAは、「AP300」設計の安全、セキュリティ、環境への影響を、サイト特定後の建設申請とは別に評価する。

WE社傘下のWEエナジー・システムズ社のD.ダーハム社長は、「AP300」の英国での建設協力についてCNP社への謝意を述べるとともに、「AP300」の英国でのタイムリーな展開を楽しみにしている、とコメントしている。

 

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