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英国 原子力部門への人材イニシアチブを始動

28 Feb 2024

桜井久子

©Destination Nuclear

英国の原子力部門は212日、今後20年間に民生用および国防用の原子力部門へ人材を募集するためのイニシアチブ「Destination Nuclear」を始動した。

「Destination Nuclear」は、政府、民間の原子力部門の組織、サプライチェーン、教育機関を横断し、大きなスキルギャップを埋めることを目的としている。民生用および国防用の原子力部門のスタッフを今後20年間で倍増する必要があり、英国全体で約8万人増の技能職の雇用を見込む。

業種転向の可能な技能を持ち、キャリアチェンジを検討している人材を対象とする。また、実習制度や大学卒業生向けの取り組みを支援し、業界をリードする組織や企業全体で博士課程の学生の雇用機会を増やすとしている。原子力部門は、成長とイノベーションの加速を目指し、高度な技能を持つ人材の採用と育成に投資を行う。他部門との協力や他産業から転向する可能性のある人材向けのリスキリングの訓練プログラム開発も行う。

建設や製造業など他部門で働く人材が持つ技術-デジタル、ロボット、人工知能-は、原子力分野の溶接、システムエンジニア、プロジェクト計画、土木・構造エンジニアなどでも活用が可能である。

英国政府は多額の投資を背景に、防衛戦略およびクリーンエネルギーへの移行のため原子力の活用に取り組んでおり、原子力を重要部門と認識。今年1月には、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表し、2050年までに国内で合計2,400kWの新規原子力発電所を稼働させる計画だ。

英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、本イニチアチブの始動に際し、「英国の野心的な目標の達成には、原子力分野での採用を急速に拡大し、エンジニアから溶接工まで、新しい原子力プラントの設計と建設に十分な人材を確保する必要がある」と強調する。J.カートリッジ国防調達閣外大臣は、「人材は原子力部門のカナメであり、国防では24時間体制で貢献する。国防の原子力部門では今後数十年にわたり非常にエキサイティングな時期が続く。産業界と協力して母国での技能の可能性を実現していきたい」と語る。

「Destination Nuclear」の責任者であるL.マシューズ氏は、「潜在的な候補者の多くは、原子力をキャリアとして考えていなかったかもしれない。『Destination Nuclear』は、原子力部門の豊富な雇用機会を示し、より幅広い分野出身の人材の挑戦的でやりがいのある持続可能なキャリア探しを支援する」と意気込みを語った。

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