カナダ ブルースC増設計画に連邦政府が資金拠出
05 Mar 2024
J.ウィルキンソン大臣による連邦資金拠出の発表(左) T.スミス オンタリオ州エネルギー大臣(中央) M.レンチェック ブルース・パワー社社長兼CEO(右) ©Bruce Power
カナダ連邦政府は2月29日、オンタリオ州のブルース原子力発電所の増設プロジェクトに関する実行可能性調査(FS)を支援するため、ブルース・パワー社に5,000万カナダドル(約55.4億円)を拠出すると発表した。
本発表は、オタワで開催されたカナダ原子力産業協会(CNA)の年次大会の席上、カナダのエネルギー天然資源省のJ.ウィルキンソン大臣が行った。今回の資金拠出は、ネット・ゼロ経済の構築に向けた連邦政府の計画「Powering Canada Forward」や、オンタリオ州の経済成長に向けたクリーンな長期的電力システム構築計画「Powering Ontario’s Growth」に沿ったものである。
J.ウィルキンソン大臣は、この資金拠出が、経済を促進しつつ、パリ協定に基づく排出削減目標を達成するという連邦政府のコミットメントに沿って、カナダ国内のパートナーと協力して、クリーンで信頼性の高い手頃な価格の電力システムを全国に構築するという連邦政府の目標を支援するものであり、オンタリオ州で良質な雇用と経済成長を牽引するものであると強調した。オンタリオ州のT.スミス大臣は、ブルース発電所で大規模な増設が可能になれば、オンタリオ州の世界有数の信頼性の高い、手頃な価格のクリーンな電力システムへのアクセスを目指して海外からの投資が集中するとし、今回の連邦政府による支援への期待を語った。
ブルース・パワー社は、ブルースA発電所(1~4号機)、B発電所(5~8号機)で各80万kW級のCANDU炉×計8基を運転中で、3~8号機の運転期間延長プログラムと主要機器交換を主とする大規模改修がスケジュール通りに予算内で進行中である。1、2号機は既に改修が終わっている。
オンタリオ州の要請により、ブルース・パワー社は現在、「ブルースC」プロジェクトとして、自社のサイト内に計480万kWの増設に向けた可能性評価のため、周辺住民や環境等に対する潜在的影響の評価(Impact Assessment=IA)手続きを進めている。連邦政府からの資金を活用し、IAの完了とサイト準備許可(LTPS)の申請、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携活動、技術面・環境面・工学面の調査と評価など、「ブルースC」プロジェクト開発へ向けた主要作業を実施する。
ブルース・パワー社のM.レンチェック社長兼CEOは、「ブルースC増設に向けた作業への連邦政府からの資金拠出は、連邦政府と州政府が民間部門と協力して、地元自治体や先住民コミュニティとの早期からの連携や、オンタリオ州とカナダの全国民に長期的なクリーン・エネルギーをもたらすプロジェクト開発を支援している素晴らしい例である」と述べた。
また、CNA年次大会では、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)社が「カナダにおけるウェスチングハウス(WE)社製AP1000プロジェクトの経済的影響」を発表。PwC社によると、WE社はオンタリオ州に4基の「AP1000」設置を検討しており、製造、エンジニアリング、建設段階(2025~2040年)を通じてカナダのGDPに287億カナダドル(約3.2兆円)の経済効果を与え、稼働を開始すれば、年平均でGDPが81億カナダドル(約8,980億円)増加し、1.2万人の雇用を生み出すという。カナダのCO2排出削減を支援する他、国内のサプライヤーにも新たな機会をもたらすことが予想されている。WE社は、今年オンタリオ州キッチナーに新しいエンジニアリング・ハブを開設するなど、カナダに原子力プロジェクト支援拠点を拡大している。オンタリオ州だけでなく世界で展開される「AP1000」プロジェクトでカナダのサプライヤーを活用することで、1基あたり8.8億カナダドル(約975億円)のGDP増となる可能性があると言及。また、WE社製の小型モジュール炉(SMR)「AP300」やマイクロ炉「eVinci」の展開においてもカナダのサプライヤー活用を想定している。