原子力産業新聞

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米国 原子力発電所直結のデータセンターをアマゾン子会社に売却

22 Mar 2024

大野 薫

サスケハナ原子力発電所©タレン・エナジー社

米国テキサス州・ヒューストンに拠点を置く電力会社のタレン・エナジー社は34日、同社が所有するペンシルベニア州北東部にあるキュムラス(Cumulus)データセンター・キャンパスを米アマゾン傘下のクラウド・サービス・プロバイダーであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)社に売却したと発表した。売却額は65,000万ドル(約960億円)。

キュムラスデータセンターは、タレン社が90%を所有、運転する隣接のサスケハナ原子力発電所(BWR, 130.0kW×2基)から直接電力供給を受ける。キュムラス・キャンパス内には、同様に同発電所から電力を調達しているノーチラス(Nautilus)暗号資産(仮想通貨)施設が現在稼働中であり、タレン社はその75%の権益を保持している。

キュムラス・キャンパスは、ビットコインのマイニングとクラウド・コンピューティング・サービスをホストする目的で設立されたもので、原子力サイトを活用する例としては全米初の試み。その他、同じペンシルベニア州内にあるビーバーバレー・サイト(PWR, 98kW×2基)でも同様の動きがある。AWS社は今後、同キャンパスを96kW規模のデータセンターに拡張する計画で、一方のタレン社は10年間の電力購入契約(PPA)を通じて、サスケハナ発電所からカーボンフリーの電力をデータセンターに直接供給する計画だ。

アマゾンは、2025年までに100%再生可能エネルギーによる事業の運営に向けて取り組んでおり、天候に左右される風力や太陽光発電を補完するために、今回カーボンフリーな原子力を選択したという。

近年、米国などではデータセンター等の電力需要増を見込み、IT産業による原子力活用に向けた動きが報じられている。具体的には20236月、マイクロソフト社が電力会社のコンステレーション・エナジー社と、データセンター向けに原子力由来の電力供給契約を締結したほか、10月には大手ホスティングプロバイダーのスタンダードパワー社が、データセンター向けの電力供給用として、ニュースケール・パワー社のSMR24基導入する計画(約200kW規模)を発表している。

国際エネルギー機関(IEA)によると、データセンターや人工知能(AI)などによる電力消費が、2026年までに倍増する可能性があり、2023年のデータセンターによる電力消費量4,600kWh(推定)から2026年には1kWh以上に達すると予測されている。1kWhは、日本の年間電力消費量に匹敵する。

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