X-エナジー社 SMR運転員向けに初の訓練施設を開設
29 Mar 2024
最新鋭の制御室シミュレーター ©X-energy
米国のX-エナジー社は3月14日、同社の小型モジュール炉(SMR)である「Xe-100」の将来の運転員向けに初の訓練施設を開設したと発表した。
同施設はプラント・サポートセンター(PSC)と称し、本格的なプラント制御室シミュレーター、原子炉保護系のプロトタイプを備えるほか、バーチャルリアリティの体験が可能である。
PSCは一度に最大52人の運転員を訓練する設計。X-エナジー社の訓練プログラムでは、PSCの仮想シミュレーション環境により、「Xe-100」の将来の運転員が現場に入る前に実践的かつ貴重な体験学習環境を提供する。高度な制御室シミュレーターは現実のプラント制御室を再現しており、運転員の操作性を高め、コスト効率向上を目的とした自動デジタルシステムを有する。新型原子炉概念の開発支援計画2015(ARC-2015)、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)など、米国エネルギー省(DOE)のプログラムとの長年の技術協力に基づく。
X-エナジー社によると、PSCは、「Xe-100」稼働前の人間工学と統合システムテストの検証と強化にも役立つという。「Xe-100」稼働後は、訓練と専門能力開発の強化のため、現場で収集された実際のパフォーマンスと運用データを活用して継続的に教育プログラムを実施する。また、「Xe-100」の拡大展開を支援するため地域センターを新たに設立する計画であり、運転、保守、訓練サービス事業の拠点とする計画だ。
同社のC.セルCEOは、「PSCは、次世代の運転員の訓練に役立ち、当社の革新的かつ先進的SMRの初号機以降の展開を支えるもの。アナログからデジタル表示へ、過去のデータからリアルタイムのデータまで、これは米国の原子力を前進させるための非常に魅力的なツール」であり、今後の運転員育成の前進のきっかけとなれば、と期待を寄せる。
「Xe-100」は、TRISO燃料(3重被覆層・粒子燃料)を使用する電気出力8万kWの高温ガス炉。DOEが2020年、先進的原子炉実証プログラム(ARDP)で支援対象に選定した二つの設計のうちの一つである(もう一つは、テラパワー社の「Natrium」)。X-エナジー社は、米・大手化学メーカーであるダウ・ケミカル社のテキサス州メキシコ湾沿いに位置するシードリフトの製造施設に2020年代末までに「Xe-100」初号機の運転開始を予定し、テネシー州オークリッジでは、HALEU燃料[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランであるX-エナジー社独自のTRISO-X燃料の製造工場(TF-3)を建設中だ。米国北西部ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウェスト社とも「Xe-100」の展開で2023年に共同開発合意書を締結している。
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン |
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