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カナダ 遠隔地向けマイクロ炉開発で協力覚書

01 Apr 2024

桜井久子

プロディジー社 マイクロ炉発電所 設置想像図 ©Prodigy

カナダのプロディジー・クリーン・エナジー社と先住民経済開発公社のデ・ネイド・グループ(Des Nëdhé Group)は319日、米ウェスチングハウス(WE)社製マイクロ炉を搭載した洋上可搬型原子力発電所による、カナダ遠隔地の鉱業や先住民コミュニティへの電力供給に向けた開発に係る覚書に調印した。

覚書に基づき、プロディジー社とデ・ネイド社は、可搬型原子力発電所(TNPP)プロジェクトの可能性を探り、カナダ全土のファーストネーション(First Nations)、イヌイット(Inuit)、メティス(Metis)に分類される先住民族が新設されるTNPPに資本参加するケースや、先住民族の労働力がTNPPの商業化と戦略的インフラ開発で主導的役割を果たすケースなどを確認していく。

プロディジー社は、この協力は、カナダ北部での長年にわたるディーゼルによる電熱供給に代わって、クリーンなエネルギーへの移行により先住民族のリーダーシップを拡大し、経済的にも解決をめざす上で重要な一歩であるとの見解を示し、「カナダ北部における革新と成長の可能性は無限だ。カナダ国土の40%近くを誇り、何千キロもの険しい海岸線と蛇行する川、金属や鉱物資源の膨大な埋蔵量、豊かな先住民族の文化と伝統、そして世界でも有数のオーロラ鑑賞スポットなど、カナダ北部の辺境地域は経済発展の機が熟している」と語る。その一方で、「北部の産業成長の実現に必要なクリーンで手頃な価格のエネルギー供給が不足している。南部と異なり、送電網とディーゼルの代替エネルギーインフラ導入はコスト高により実現できず、先住民族は貧しいエネルギーインフラしか持たず、資源へのアクセスが限られ、何世代にもわたって成長の機会を奪われてきた。さらに最近では気候変動による環境の変化によって、先住民族の文化的伝統と持続可能な地域経済がますます脅かされている」と付け加えた。

プロディジー社製TNPPは、造船所で建造、装備され、部分的に試運転された後、陸上または海上(岸辺)のいずれかに設置するために現場に輸送される。プロディジー社はWE社と共同で、WE社製のマイクロ炉「eVinci」搭載のTNPP開発中である。

eVinci」は、分散型発電市場や、遠隔地のコミュニティ、鉱業、重要インフラ向けの小規模送電網のための「小型バッテリー」である。熱出力1.4kW、定格電気出力0.5万kWのヒートパイプ冷却炉で、WE社によると、競争力と復元力のある電力と最小限のメンテナンスで優れた信頼性を提供する設計を特徴としている。TNPPは単一または複数の「eVinci」を搭載可能だ。

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