高速炉「Natrium」の建設許可を申請
03 Apr 2024
NRC、テラパワー社の職員。前列右から3番目がレベスクCEO ©TerraPower
米テラパワー社は3月29日、米原子力規制委員会(NRC)に自社が開発する「Natrium」炉の建設許可を申請した。ワイオミング州南西部のケンメラーに電気事業者パシフィコープ社が所有する閉鎖予定の石炭火力発電所の近くに、「Natrium」を建設する計画だ。
建設許可申請は商業規模の先進炉としては米国初であり、許可に先立って、今年の夏には非原子力部の建設工事を開始する。
「Natrium」炉は、HALEU燃料[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランを使用する電気出力34.5万kWのナトリウム冷却高速炉(SFR)で、GE日立・ニュクリアエナジー社との共同開発。熔融塩を使ったエネルギー貯蔵システムを併設し、ピーク時には電気出力を50万kWまで増強して5.5時間以上稼働が可能だ。米エネルギー省(DOE)が支援する先進的原子炉実証プログラム(ARDP)の5~7年以内に実証可能な炉に2020年10月に選定されたプロジェクトの1つである(もう1つは、X–エナジー社の高温ガス炉「Xe-100」)。なお、テラパワー社は、マイクロソフト社創業者のビル・ゲイツ氏が設立、会長を務めるベンチャー企業。
テラパワー社は、サザン・カンパニーやオークリッジ国立研究所(ORNL)、米電力研究所(EPRI)などと塩化物熔融塩高速炉「MCFR」の開発も共同で進めており、その前段階の実験炉「MCRE」はARDPの将来実証炉リスク低減プロジェクトの枠組みでDOEから支援を受けている。「MCRE」はアイダホ国立研究所で建設、運転される計画だ。
同社のC.レベスク社長兼CEOは、今回の申請は「Natrium」の市場投入に向けた画期的な一歩であり、クリーンで信頼性が高く、電力負荷の変化に追従する柔軟な運転が可能な電源の導入により、ケンメラーに長期的な雇用をもたらすと指摘、NRCとは許認可申請前活動で緊密に連携しており、許可取得に自信をのぞかせる。今年夏の非原子力部の着工にあたっては、地元のステークホルダー、議員、規制パートナーらと緊密に連携していくとしている。
同社は当初、ロシアから供給されるHALEU燃料を使用し、2028年までに「Natrium」の稼働を計画していたが、ウクライナ紛争でロシアからのHALEUの継続的な供給が不可能となったため、国内での調達可能性を探りつつ、2030年の運転開始を予定している。なお、パシフィコープ社は、2023年の統合資源計画(IRP)で、2033年までにさらに2基の「Natrium」をユタ州で稼働中の石炭火力発電所の近くに設置することも検討している。
脚注
↑1 | U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン |
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