原子力産業新聞

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ケニア 原子力導入計画を発表

04 Apr 2024

桜井久子

2023-2027年戦略計画の発表式典の模様  ©NuPEA

ケニア国営企業の原子力発電・エネルギー機構(Nuclear Power and Energy AgencyNuPEA)は318日、同国初となる原子力発電所の建設に向け、今後5年間の原子力開発計画の指針となる2023-2027年戦略計画発表した。2034年までに運転開始を計画する。

NuPEAは、ケニア原子力発電委員会(KNEB)の後継組織として、エネルギー法により2019年に移管され、原子力プロジェクトの実施を所掌する。ケニアでは、地熱発電が総発電電力量の約4割を占め、残りを水力、火力等でまかなっている。

戦略計画の発表式典に出席した同国エネルギー・石油省のA.ワチラ第一次官は記者団に対し、原子力発電の導入は、信頼性、手頃な価格、低炭素排出を実現する、ケニアのエネルギーの将来にとって不可欠な要素であり、戦略計画は原子力施設を安全に建設、運転、保守、廃止するためのインフラ整備のガイドラインであると指摘。同省傘下のNuPEAJ.ワブヤボCEOは、この戦略計画では、原子力利用、放射線防護、放射性物質の輸送、放射性廃棄物に関する国際協定、条約、義務の遵守を約束し、原子力発電がケニアのエネルギー・ミックスの重要な構成要素となるよう、法的枠組みを確立するための手順や人材育成計画が含まれていると言及した。

戦略計画では原子力発電の導入準備として、原子力インフラ開発、公衆教育とステークホルダーの参画、エネルギー研究とイノベーション、人材・制度開発、研究炉プログラム開発、組織力の強化という6つの戦略目標を掲げ、当該5年間のプラグラム実施に要するコストは2.73億ドル(約414億円)と見積もる。なお、同国の原子力開発は、国際原子力機関(IAEA)のマイルストーン・アプローチのフェーズII(原子力発電導入決定後の契約・建設の準備作業の段階)に位置付けられ、原子力規制機関も設立されている。

原子力インフラ開発のロードマップでは、同国初の原子力発電所を2034年までに稼働させる計画のほか、2030年代初頭までに研究炉(KNRR)を稼働させる。発電所の建設候補地としてはインド洋に面するキリフィ郡とクワレ郡が特定され、事業化調査が実施済み。2029年に発電所のサイト準備、20302031年に建設を開始する計画だ。また、首都ナイロビの南64kmに位置するコンザ・テクノポリスの技術拠点に研究炉用の土地が確保されている。政府は現在、国内外の原子力関連コースでケニア人の研修を実施している。

ワブヤボCEOは、「ケニアは米国、韓国、中国を含む国々と原子力開発に係る覚書を交わしているが、原子力分野での人材育成を含む我々のニーズに応えるパートナーを探している。出力100kWの建設プロジェクトは36億ドル(約5,460億円)と高いが、運転や保守費用は安価であり、原子力発電の経済的メリットはコストを上回る。入札を2027年に計画している」と語った。

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