原子力産業新聞

海外NEWS

ロシア 沿海地方に浮揚式原子力発電所の導入を計画

08 Apr 2024

桜井久子

海上浮揚式原子力発電所の設置予想図 ©Rosatom

ロシア国営原子力企業ロスアトムが後援する国際会議ATOMEXPO-2024(於ソチ市)会期中の326日、ロスアトムの機械製造部門とロシア沿海地方政府が、沿海地方における海上浮揚式原子力発電所の導入に向けて、最適な設置場所の検討も含めた事業化調査の協力に関する覚書に調印した。

ロシア極東地域では慢性的にエネルギー不足であり、同国の系統運営会社「統一エネルギーシステム」による予測では、2029年から2030年までに少なくとも135kWの発電設備容量が必要になる。ロスアトムのリハチョフ総裁は以前よりロシア極東地域における大型および小型の原子力発電所の導入について言及している。

ロスアトムの機械製造・産業ソリューション担当A.ニキペロフ副総裁は「小規模の原子力発電は安定したエネルギー供給が可能で、何十年にもわたってエネルギーコストを予測可能なグリーン電源であり、社会経済発展への長期的な投資でもある。機動性と拡張性を備えた海上浮揚式原子力発電所は産業とインフラが発展している地域のニーズを満たすだけでなく、地域の経済潜在力をさらに拡大し、人々により良い生活環境をもたらす」と語る。

ロスアトム機械製造部門のI.コトフ部門長は、「RITM-200炉をベースとした新世代の海上浮揚式原子力発電所は、産業企業や都市全体への電力供給の信頼性が高く、環境にも優しい。我々の先進技術の導入経験と大規模発電所の機器製造能力により、沿海地方に予測可能な電気料金で、信頼性の高いグリーンな電力を提供する」と述べた。

協力枠組みにより、原子力発電所の沿海地方への導入を目的とした共同作業部会の設置、情報交換、協議が実施される。沿海地方のエネルギー・ガス供給大臣であるA.レオンチェフ氏は、「第一段階では、沿海地方南部のエネルギー不足を解消するためには4体の海上浮揚式原子力発電所が必要。小規模な原子力発電に加えて、中期的には出力60kWの原子炉2基の建設が必要と考える」と付け加えた。

現在、極北のチュクチ自治管区で、ビリビノ原子力発電所(EGP-6、各1.2kW×3基)と世界初で唯一の海上浮揚式原子力発電所であるアカデミック・ロモノソフ号(KLT-40S、各3.5kW×2基)が運転中で、近隣地域に電気と熱を供給している。サハ共和国のウスチ・クイガでは、RITM-200N炉を備える陸上設置型のSMR建設プロジェクトが進行中だ。

海上浮揚式原子力発電所は、沿岸部や遠隔地向けに信頼性が高く、費用対効果の高い電力供給を目的とし、搭載予定のRITM-200型炉は原子力砕氷船での運用で実証されている。現在、チュクチ自治管区のバイムスキー鉱業プラントへの電力供給のためナグリョウィニン岬に係留予定の海上浮揚式原子力発電所が建設中である。

海上浮揚式原子力発電所には多くの国や地域が関心を寄せているという。ATOMEXPO-2024会期中の同日、ロスアトムの機械製造部門とロシアのエンジニアリング企業であるTSSグループは、海外市場向けに海上浮揚式原子力発電所を建設・運転する合弁会社設立に向けた契約の主要条件で合意した。合弁会社の出資比率は同等。両社は少なくとも10kWの電気出力で耐用年数60年のRITM-200M炉を搭載した海上浮揚式原子力発電所を建設・運転し、海外消費者への電力販売を想定している。

cooperation