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中国 高温ガス炉HTR-PMによる地域暖房プロジェクト始動

12 Apr 2024

桜井久子

HTR-PMサイト ©China Huaneng

中国山東省の石島湾サイトにあるペブルベッド型モジュール式高温ガス炉(HTR-PM、電気出力21.1kW)による地域暖房プロジェクトが327日に始まった。第4世代原子炉による初の地域暖房システムである。

同プロジェクトは、高温ガス炉の蒸気システムから取り出された高温蒸気を利用して熱交換器内の水を高温水に加熱、高温水は二次熱交換のために地方自治体の発電所にある熱交換施設を経由して暖房用の温水となり、その温水を地域暖房に活用しようというもの。HTR-PMを所有、運転する中国華能集団(China HuanengCHNG)によると、このプロジェクトにより190,000平方メートルの暖房供給エリアが追加され、1,850世帯のクリーンな暖房ニーズを満たすことが可能。また、暖房シーズンごとに石炭3,700トン分を代替し、6,700トンのCO2排出量が削減される見込み。

高温ガス炉は、固有の安全性、高い出口温度、環境に優しく、モジュール設計などの優れた特性を持ち、コジェネ、重油熱回収、水素製造、化学冶金など、幅広い産業分野での利用が可能だ。

HTR-PMは2基の小型原子炉(熱出力各25kW)で、蒸気タービン1基を駆動する電気出力21.1kWの世界初ペブルベッド・モジュラー型高温ガス炉。冷却材にヘリウム、減速材に黒鉛を使用し、各原子炉には直径60mm、濃縮度8.5%の燃料7gを含む球状燃料要素(ペブル)を245,000個以上装荷、各ペブルは黒鉛の外層を持ち、黒煙マトリックス中に分散した約12,000個の4層セラミック被覆燃料粒子を含む。この燃料は高い固有の安全性を持っており、1,620℃を上限とした高温下でも損傷がなく、核分裂生成物を保持できるという。

HTR-PMは201212月に着工後、202112月に送電を開始し、202212月の全出力運転達成を経て、202312月に営業運転を開始した。HTR-PM実証プロジェクトは、清華大学(Tsinghua University)が技術リーダーとして研究開発、主要コンポーネントおよびシステム設計を担当し、CHNGが所有者兼運転者、中国核工業集団(CNNC)が設計・調達・建設請負および燃料製造担当として携わる国家科学技術重点プロジェクトである。

HTR-PMの原型は、清華大学・核能与新能源技術研究院(INET)の高温ガス冷却実験炉HTR-10(熱出力1万kW)で、2000年に運転開始、2003年に全出力運転を達成している。なお、中国は現在、定格出力65kWeのタービン1基を6基の原子炉モジュールで駆動する、より大型のHTR-PM600を開発中である。

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