X-エナジー社製SMR 英国への導入で補助金を獲得
15 Apr 2024
Xe-100の概念図 ©X-Energy
米X-エナジー社と英キャベンディッシュ・ニュークリア社は4月4日、X-エナジー社製高温ガス炉「Xe-100」(電気出力8万kW)の英国への導入に向け、英政府から334万ポンド(約6.6億円)の補助金を獲得した。
米X-エナジー社の100%子会社であるXエナジーUKホールディングスと英キャベンディッシュ社は、「Xe-100」の包括的設計審査(GDA)とサプライチェーン開発への支援を目的に、英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)の「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」に補助金を申請していた。X-エナジー社と、英バブコック・インターナショナル社傘下の原子力発電所サービス会社であるキャベンディッシュ社は2022年5月、英国内でX-エナジー社製の高温ガス炉(HTGR)を建設するため、協力覚書を締結している。
「FNEF」は、2022年5月にDESNZの前身であるビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1.2億ポンド(約230億円)の補助金交付制度。2030年までに最終投資決定(FID)を行う可能性のある完成度の高い炉型を採用した潜在的な原子力プロジェクトを対象とし、業界のプロジェクトに係るリスクを軽減し、将来の投資決定で有利になるよう支援するのが目的。
DESNZは、今回の両社による申請が4つの評価基準すべてで基準をクリアし、同省の適正評価とガバナンス承認手続きを完了、英政府が研究開発後の商業化と事業開発活動に向けた先進的モジュール炉(AMR)に与える補助金としては初のものであるという。
DESNZのA.ボウイ原子力・再生可能エネルギー担当大臣は、「我々は2050年までに電力の4分の1を原子力発電で賄うという野心的な目標達成のため、大型炉の建設から先端技術の奨励まで原子力技術革新を支援する。この補助金はAMR開発における次のステップを支援するものであり、英国を原子力技術の最前線に維持するというコミットメントを示す」と語る。
両社は英政府の補助金とX-エナジー社による同額の資金提供により、国内製造とサプライチェーンの検討、建設可能性、モジュール化研究、燃料管理を含む、英国での導入計画を策定する。具体的には、イングランド北東部ティースサイドのハートルプール原子力発電所サイトに「Xe-100」を12基建設し、2030年代初頭までに完成させる計画だ。また、両社は英国内に最大40基の「Xe-100」建設を計画する。
両社はまた、建設・インフラサービスの英大手プロバイダーであるKier Groupと建設可能性とサプライチェーンの分析支援で提携した。Kier社は、大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社、英政府が産業界との協力により2012年に設置した先進的原子力機器製造研究センター(NAMRC)と共に、X-エナジー社とキャベンディッシュ社によるFNEF提案について支援する。X-エナジー社とキャベンディッシュ社は、「Xe-100」建設プロジェクトで最大80%を英国内サプライチェーンから調達するという目標を設定した。
両社は、英国の原子力規制当局と協力して「Xe-100」の許認可手続きに向けた準備を計画しており、カナダと米国では原子力規制当局による同設計の許認可申請に先立つ事前評価活動が進められている。
「Xe-100」は第4世代先進炉設計のペブルベッド式小型高温ガス炉(HTGR)。X-エナジー社によれば、数十年にわたる高温ガス炉の運転、研究、開発に基づいている。4基連結の標準的な32万kWの発電所として、または8万kW単位で運転できるように設計されており、系統に信頼性と負荷追従性の高い電力を供給し、再生可能エネルギー源と断絶なく組合わせられる。熱出力20万kWで565℃の蒸気を供給する「Xe-100」は、鉱業や重工業など他産業用途にも適しているという。