米エネ省 石炭火力から原子力への移行ガイドライン
16 Apr 2024
©US DOE
米エネルギー省(DOE)は4月1日、閉鎖済み、または閉鎖する石炭火力発電所の原子力発電所への代替を検討するコミュニティ向けにガイドラインを発表した。
ガイドライン(Coal to Nuclear Transitions: An information guide)は、石炭火力発電所から原子力発電所への移行が、地元での雇用機会、高賃金の雇用創出、立地地域・発電事業者・地元サプライヤーの収入増など立地地域に利益をもたらすことを示した。これはDOE傘下の(アルゴンヌ、アイダホ、オークリッジ)の3つの国立研究所による詳細な共同研究に基づく。また、トレーニング・プログラムにより、既存の石炭火力発電所のほとんどのスタッフが代替する原子力発電所へ移行可能であることが研究で明らかになっている。
2035年までに国内の石炭火力発電所の30%近くの閉鎖が予想されており、発電所が立地する地域社会にとって経済的な不確実性を意味する、とガイドラインは指摘する一方、先進的小型モジュール炉(SMR)は石炭火力発電所の代替に最適であるとしている。
ガイドラインは、コミュニティに対して石炭から原子力への移行(coal-to-nuclear=C2N)に伴う経済的影響、労働力の移行に関する考慮事項、政策と資金に関する情報を提供するほか、電力会社向けに移行スケジュールやインフラの再利用などの考慮事項についても示している。
「CO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)経済への移行に取組む中、何十年にもわたって米国のエネルギーシステムを支えてきたエネルギーコミュニティと石炭労働者へのサポートは絶対不可欠である」とDOEのK.ハフ原子力担当次官補は語る。
DOEの2022年の調査報告書では、C2Nの潜在的な候補地として、閉鎖157か所と運転中237か所の石炭火力発電所を特定し、候補地の80%が先進原子炉の立地に適していると報告。C2Nでは、用地や電気機器設備、道路や建物など石炭火力のインフラ設備を再利用できるため、何もない更地に建設する場合と比べ最大35%の建設コストの削減が見込まれている。
先進炉開発会社であるテラパワー社は、同社製「Natrium」初号機の建設サイトに、閉鎖される石炭火力発電所の隣接サイトを選定している。3月末にワイオミング州南西部のケンメラーでの建設許可を米原子力規制委員会(NRC)に申請し、年内に非原子力部分を着工する計画だ。この石炭火力発電所を運転するパシフィコープ社は昨年、「Natrium」をユタ州で運転中の石炭火力発電所の近くにも2基導入する検討を始めたことを発表している。