ノルウェー SMR建設に新たな候補サイト
17 Apr 2024
エイガーデンにおけるSMR建設サイト候補地©Norsk Kjernekraft
ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社は4月4日、最大5基の小型モジュール炉(SMR)で構成される原子力発電所の建設サイト候補地として、ノルウェー西岸ヴェストラン県ベルゲン市の西にあるエイガーデン(Øygarden)自治体サイトの影響評価作業を開始することを明らかにした。
ノルスク社は今後、自治体、住民、産業界との協議の基礎となる、SMR発電所建設の評価に関する提案書をエネルギー省に提出し、同省が承認すればコメントとともに影響評価の準備に反映する。
ノルスク社はこれまで、エイガーデン自治体当局や政治家との会合に出席したほか、公開会合を数回開催してきた。
対象となるサイトはコルスネス工業地帯に隣接し、エイガーデンの前首長が所有する、250エーカー(約1km2)。ノルスク社は、SMR発電所の建設サイトとして同サイトを取得することを明記した意向書を前首長と交わした。ノルスク社によると、同サイトに電気出力30万kWのSMRを5基建設すると、年間125億kWhの発電が可能で、これはノルウェーの現在の総電力消費量の約10%に相当する。
ノルスク社のJ.ヘストハンマルCEOはこの合意を受け、「調査に前向きな自治体は非常に多く、将来的に原子力発電所の建設可否の判断材料となる具体的な情報を得られる」と語る。
ノルスク社は2023年、ノルウェー海に面したアウレ(Aure)自治体とハイム(Heim)自治体、北極圏のナルヴィク(Narvik)自治体およびバレンツ海に面したヴァードー(Vardø)自治体からSMR立地可能性調査の実施要請を受け、各自治体と調査プログラムの実施協定を締結している。自治体での原子力発電導入の可能性に関連して、同社は同年6月、フィンランドのティオリスーデン・ボイマ(TVO)社のコンサルティング子会社であるTVOニュークリア・サービス(TVONS)社と、ノルウェーにおけるSMR導入に向けた共同調査の実施に係る基本合意書を締結した。11月には、アウレとハイムの両自治体におけるSMR発電所建設の評価に関する提案書を石油・エネルギー省に提出し、ヴァードー自治体についても同様の提案書を作成中である。また同月、エストフォル・エネルギー(Østfold Energi)社ならびにハルデン市と、かつて研究炉が運転されていたハルデン市におけるSMR発電所建設の調査に向け、共同で新会社のハルデン・シャーナクラフト(Halden Kjernekraft)社を設立した。
ノルスク社は、電力集約型産業と共同でノルウェーにSMR発電所を建設、所有、運転することを目指し、国内規制と国際基準(IAEAのマイルストーン・アプローチ)に従って許認可申請を準備するとしている。
なお、ハイム自治体は4月12日、SMR発電所建設区域の設定に向けた規制作業を開始し、同区域の既存の計画を中止すると発表した。同自治体とアウレ自治体との境界に位置する共同工業地帯には温室効果ガス排出の大幅な削減と大量の電力を必要とする電力集約型産業が立地しており、SMRの必要性が高まっている。ノルスク社のヘストハンマルCEOは、「ハイムとアウレの両自治体は、産業と住民に十分な信頼性の高い電力を供給することに前向きに取り組んでいる。当社は、両自治体とともにSMR発電所建設に関する提案書を石油・エネルギー省に提出した」と指摘した。