ロシア 鉛冷却高速実証炉用燃料製造プラントが試験稼働へ
26 Apr 2024
燃料加工/再加工モジュールの製造ライン ©SCC
ロシアのシベリア化学コンビナート(SCC)は4月12日、連邦環境・技術・原子力監督庁(ロステフナゾル)から、鉛冷却高速実証炉「BREST-OD-300」用の燃料加工/再加工モジュールの試験操業の認可を取得した。これにより、すべての燃料製造ラインで劣化ウランを使用した試験が可能になる。
SCCは、シベリア西部のトムスク州セベルスク市に所在する核燃料製造企業トヴェル社傘下企業で、同サイトでは第4世代のBREST-OD-300(FBR、30万kWe)が建設中である。冷却材に鉛を使用、ウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料を使用する。燃料加工/再加工モジュールでMNUP燃料を製造し、併設される再処理モジュールでBREST-OD-300の使用済み燃料を再処理、回収したウランとプルトニウムを新燃料に再加工する。これらを「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」と総称し、国営企業ロスアトムが進めている戦略的プロジェクト「ブレークスルー(Proryv)」の主要施設と位置付けられている。
PDECでは単一のサイトで燃料製造とリサイクルが可能になる。BREST-OD-300用の高密度MNUP燃料は、ウラン濃縮の副産物である劣化ウランと使用済み燃料から抽出されたプルトニウムの2つの主要成分から構成される。劣化ウランは、核分裂性ウラン235の含有量が約0.1%でほとんどが安定したウラン238(天然ウラン組成の99%以上)から構成されるため、原子力・放射線安全上のリスクはない。BREST-OD-300は、主要なエネルギー成分であるプルトニウム239をウラン238から再生するため、天然ウランの利用効率を大幅に向上させる。
今後、燃料加工/再加工モジュールでプルトニウムを取扱う認可をロステフナゾルから取得する予定だ。再処理モジュールでMNUP燃料のリサイクルを繰り返すことで、ウラン濃縮工程で生じた劣化ウランの蓄積分を利用し、放射性廃棄物の発生を削減することが可能。濃縮工場に貯蔵されている劣化ウランを除けば、外部からのエネルギー供給に依存しない、ほぼ自律的な閉じた燃料サイクルが完成することになる。
二酸化ウランベースの従来の原子燃料とは異なり、MNUP燃料は標準的技術と設備では製造できない。非標準的な燃料組成に加え、使用済み燃料から抽出したプルトニウムからの作業員への高い線量負荷を防ぐため、燃料製造工程は可能な限り自動化される。MNUPの製造にはウランとプルトニウムの混合窒化物の炭素熱合成ライン、燃料ペレットの製造ライン、燃料棒の組立ライン、燃料集合体の製造ラインの4つのラインがある。燃料加工/再加工モジュールはほぼ完成しており、現在、製造ラインの機器の試験が行われている。3月末には炭素熱合成ラインの試運転が開始された。
4月18日、BREST-OD-300の建設現場で原子炉格納容器の中間層が原子炉シャフトに据付けられ、構造物据付けの第2段階が完了した。重量は吊り具を含めて184トン。原子炉格納容器は3つのブロックで構成され、格納容器の総重量は429トン、うち312トンがすでに据付けられた。最初の据付けは2023年12月から2024年1月にかけて実施され、最終据付けは今年12月に実施予定。高さは最終的に17メートルになり、空洞には特殊な耐熱コンクリートを充填、格納容器の鉄筋コンクリートフレームに対し強度を与える。
BREST-OD-300は2027年に送電開始、燃料加工/再加工モジュールは今年末までにすべての作業を完了して操業開始、再処理モジュールは2025年から2026年にかけて着工され、2030年に操業を開始する予定だ。