原子力産業新聞

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タイ 熔融塩炉の導入を検討

07 May 2024

桜井久子

GPSC社とシーボーグ社の覚書調印式  ©GPSC

タイの電力会社Global Power Synergy Public Company LimitedGPSC)は424日、デンマークのシーボーグ・テクノロジーズ社(Seaborg Technologies ApS)と協力覚書(MOU)を締結。タイにおいてシーボーグ社製コンパクト熔融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所であるパワー・バージの導入可能性を調査する。

GPSC社のW.ピタヤシリ社長兼CEOとシーボーグ社のK.ニェンガードCEOが、タイ・バンコクのデンマーク大使館で大使の立会いのもと、覚書に調印した。

CMSRパワー・バージは、10kWeCMSR28基を搭載したモジュール式のバージで、24年間の稼働が可能。CMSR燃料は、常時冷却が必要な固体燃料とは異なり、冷却材として機能する液体塩(熔融塩)に混ぜられており、緊急時には炉停止とともに固化する特性がある。なお、低濃縮フッ化物燃料塩はまだ商業流通しておらず、シーボーグ社は最近、初期のパワー・バージには低濃縮ウラン(LEU)を燃料にすると発表している。

覚書に基づき、タイ国営石油・ガス会社PTTグループの子会社であるGPSC社とシーボーグ社は、タイにおけるネットゼロへの移行に向けて、CMSRパワー・バージの導入を評価。その評価に基づき、CMSRパワー・バージの商業展開が実現可能な初期プロジェクトについて詳細に検討する。本調査は、パワー・バージからカーボンフリー電力の送電網接続ならびに運転中に発生する蒸気の利用可能性を探ることを目的としており、調査完了には約4年を見込んでいる。

プロジェクトが投資可能な状態にまで成熟すれば、両社はプロジェクト実現のために海外からの直接投資の誘致を計画する。調査の結果に基づき、2080kWeCMSRパワー・バージの開発・展開など、さらなる協力について検討を行う。タイの総発電設備容量は2021年時点で5,600kWe2037年には少なくとも7,700kWeに増加すると予想されている。

2023年9月、シーボーグ社はCMSRパワー・バージのインドネシア導入を検討するため、インドネシアの電力会社ペルタミナNRE社と協力覚書(MOU)を締結。同7月には、ノルウェーの新興エネルギー企業ノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)社とCMSRのノルウェーへの導入可能性を調査する基本合意書(LOI)に調印している。

この他、シーボーグ社は韓国企業とCMSR燃料開発やパワー・バージの設計・建造分野で連携している。20243月には、韓電原子力燃料(KNF)社ならびにGSエンジニアリング・コンストラクション(GS E&C)社とCMSRの燃料製造開発のフィージビリティ・スタディの実施で合意20224月には、韓国のサムスン重工業(SHI)と同社の造船技術とCMSRを組み合わせたターンキー契約のパワー・バージの建造・販売に関する戦略的パートナーシップ契約を締結。これには水素製造とアンモニア製造プラントの開発も含まれている。

2014年に設立されたシーボーグ社は、2026年にCMSRの商業用原型炉を建設し、2028年にはパワー・バージの商業生産を開始する計画を掲げている。

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