チェコの増設計画 EDFとKHNPが応札
13 May 2024
ドコバニ発電所 ©ČEZ
チェコ電力(ČEZ)と100%子会社であるドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)は4月30日、フランス電力(EDF)と韓国水力・原子力会社(KHNP)がチェコにおける4基の新規原子力発電プラント建設プロジェクトに応札したことを明らかにした。
仏EDFと韓KHNPおよび米ウェスチングハウス(WE)社は2023年10月、ドコバニ発電所の5号機に対して拘束力のある応札を行い、さらに3基(ドコバニ6号機とテメリン3~4号機)に対しては拘束力のない意向表明として増設を提案していた。が、今年1月末、チェコ政府は1基ではなく最大4基の拘束力のある入札に変更を決定。応札に必要な条件を満たさなかったWE社を除外した上で、仏EDFと韓KHNPの2社に対し次の入札への参加を招聘した。なおP.フィアラ首相によると、4基すべてに拘束力のある入札を行うという決定は、当初の入札で別々のプロセスを踏むよりも4基で契約した方がコスト面で25%、経済的に有利なことが判明したためだという。
EDU II社は今後、国際原子力機関(IAEA)の評価モデルの勧告に従い、財務・ビジネス・技術的観点から2社の提案を評価し、評価報告書を産業貿易省に提出。その後に政府の最終承認を得る計画である。2025年3月31日までに契約を締結し、初号機を2036年に試運転開始、2038年に営業運転を開始させたい考えだ。
仏EDFはEPR1200(PWR、120万kWe)を、韓KHNPはAPR1000(PWR、105万kWe)を提案しており、両社ともチェコのサプライヤーと資機材供給で合意しているという。
仏EDFの提案は、エンジニアリング、調達、建設、試運転のほか、燃料設計および燃料集合体の納入までを範囲とし、仏フラマトム社(原子炉)、GE Steam Power社(タービン)、Bouygues Travaux Publics社(土木工事)が本プロジェクトに参加。既に300社近くのチェコ企業もサプライヤーとして参加する予定だ。
韓KHNPのAPR1000は2023年3月に欧州電力要求(EUR)の認証を取得しており、欧州諸国への輸出に特化して設計、欧州の条件を満たすようにローカライズされ、IAEAと西欧原子力規制者協会(WENRA)の最新基準の要件に準拠している。また、チェコ企業との協力を長期的な優先事項とし、2016年以降に200社以上のチェコ企業を潜在的なサプライヤーとして特定し、50の覚書を締結。チェコ企業がタービンを納入する計画だ。
なお、欧州委員会(EC)は同日の4月30日、EUの国家補助ルールに基づき、チェコ政府によるドコバニ発電所での新規建設・運転支援の措置を承認した。チェコ政府から2022年3月に同計画の通知を受けたECは同年6月に調査を開始。調査の過程でECにより懸念された点を考慮してチェコ政府により措置は修正されたとし、「チェコによる国家補助は、目的達成に適切であり、また、必要最小限に制限されており、引き起こされる競争の歪みは最小限に抑えられている」とECは結論づけた。EUでは、加盟国による特定の企業に対する国家補助は域内競争を不当に歪める可能性があるとして原則禁止されており、一定の条件を満たす場合にのみ、ECによる承認を受けた上で例外的に認められている。
チェコの総発電量の約3分の1は、1985年~1987年に運転開始したドコバニ発電所の4基(VVER-440、各51万kWe)と、2000年と2002年にそれぞれ運転開始したテメリン発電所の2基(VVER-1000、各108.6万kWe)によるもの。新設4基の他、小型モジュール炉(SMR)の建設計画も存在する。原子力開発に対する国民の支持率は70%を超えており、これは欧州において高い数値である。