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北欧の電力会社 水素イニシアチブを発表

17 May 2024

桜井久子

©Fortum

フィンランドとスウェーデンの電力会社が5月上旬、それぞれ原子力関連の水素イニシアチブを発表した。

フィンランドのフォータム社は57日、ロビーサ原子力発電所(VVER-440×2基、各53.1kWe)の近くに水素製造パイロットプラントを建設する計画を明らかにした。発電所近くのKälla地区の同社所有地で、今夏着工し、2025年後半に稼働させる計画だ。

水素は「電解法」を採用し、水の電気分解により製造する。電力は送電網、水は地元の家庭用水から供給される。プラントに隣接して水素ステーションを設置し、そこから産業界の顧客に水素を輸送する。パイロットプラントはフォータム社の研究開発資金で賄われ、総額は約1,700万ユーロ(約28.8億円)。

北欧の産業界の脱炭素化を支援するため、同社は水素製造の小規模プロジェクトを通じて、大規模プラントの設計や運転、グリーン水素や水素デリバティブがもたらすビジネスチャンスを模索していくとし、林業、鉄鋼業、化学産業、運輸部門の企業と緊密に研究協力を実施している。

一方、スウェーデンのOKG社は58日、自動車向け水素ステーションを手がけるノルウェーのヒニオン(Hynion)社と、オスカーシャム原子力発電所(BWR×1基、145kWe)で余剰となった水素をヒニオン社の水素ステーションへ供給する契約を締結したと発表した。

OKG社は1992年以来、スウェーデンのオスカーシャム発電所で発電された電力を利用して、発電所に接続した水素製造プラントで電解法により水素を製造。水素は冷却材中の遊離酸素を減らして配管の応力腐食割れのリスクを低減するため、オスカーシャム13号機の冷却材に注入してきた。

しかし、オスカーシャム発電所では、20176月に1号機、201612月に2号機が永久閉鎖されたため、現在は3号機でのみ水素が使用されており、供給過剰となっている。OKG社は余剰水素の他の目的への転用を決め、プラントの近代化作業を行い、20221月に産業ガス大手のリンデ社と水素供給契約を締結している。

OKG社はヒニオン社への水素の安定供給が、エネルギー移行とカーボンフリー達成に貢献すると強調する。

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