原子力産業新聞

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ウクライナ 新設で韓国企業と協力

23 May 2024

桜井久子

協力覚書に調印する、現代E&C社チェ副社長(左)、エネルゴアトム社のコティンCEO(右)

ウクライナの原子力発電会社「エネルゴアトム」と韓国の現代E&C(現代建設)社は513日、ウクライナにおける原子力発電プラント新設の設計、建設、試運転に関する協力覚書(MOC)に調印した。

協力覚書は、ウクライナのG.ガルシェンコ・エネルギー相と韓国のH. キム駐ウクライナ大使立会いのもと、エネルゴアトム社のP.コティンCEOと韓国の現代E&C社のY. チェ副社長によって調印された。ガルシェンコ・エネルギー相は、今回の覚書調印は、フメルニツキー原子力発電所における米ウェスチングハウス(WE)社製「AP1000」(PWR125kWe)の新設プロジェクトにとって重要であると指摘する。エネルゴアトム社は、自社の新たなインフラプロジェクトへの現代E&C社からの投資と技術協力に対する期待を強調。特に、タービンを含む原子力発電プラント建設のための様々な機器供給分野において、韓国との緊密な協力への関心を表明した。

今回の覚書は、202311月に両社が締結した基本合意書(LOI)に基づくもので、LOIではウクライナにおける大型原子力発電所ならびに小型モジュール炉(SMR)プロジェクト推進に向けた支援や原子力発電プラントの研究開発に関するノウハウの交換等の分野で協力を模索することで合意していた。なお、WE社と現代E&C社は20225月、「AP1000」のグローバル展開に共同参画する戦略的協力合意を締結している。今年4月、フメルニツキー原子力発電所では「AP1000」を同国で初採用する5号機の建設プロジェクト開始の式典が米国のB.ブリンク駐ウクライナ大使も出席して開催された。

ウクライナには、20223月初旬からロシア軍の支配下にあるザポリージャ原子力発電所の6基を含め、国の総発電電力量の約半分を供給する15基の原子炉がある。フメルニツキー発電所1号機(VVER-1000)は、1986年に起きたチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所事故後の1987年に送電網に接続、1990年に24号機(VVER-1000)の工事は中断した。その後、2号機の工事は再開され2004年に送電網に接続。3号機は工事中断時に75%、4号機は28%完成していた。ウクライナ内閣は今年の4月上旬、34号機の建設・完成に関する法律案を最高会議に提出。法案成立後、3号機で機器の設置に直ちに着手する。ガルシェンコ・エネルギー相によると、3号機は最短2年半で運転開始ができるという。WE社は、34号機については、「AP1000」を採用する56号機と技術面において同様の役割は果たせないものの、一定部分での支援は可能との見解を示している36号機が完成して全6基が稼働すると、フメルニツキー発電所の設備容量は欧州最大となり、ザポリージャ発電所を超える見込み。

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