原子力産業新聞

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英国 原子力人材の強化計画を立ち上げ

29 May 2024

桜井久子

原子力スキル憲章(Nuclear Skills Charter)に署名する関係閣僚 ©NSDG

英国で原子力分野の人材に関する国家原子力戦略計画が始動した。原子力部門間での協力、トレーニングへの投資、リーダーシップ開発、多様性の向上に基づき、原子力部門に人材を惹きつけ、労働力を維持することを目的としている。

5月15日に始動した政府支援の「スキルに関する国家原子力戦略計画」(National Nuclear Strategic Plan for Skills)は、2026年までに原子力分野での新規の実習生数を倍増させ、2030年までに4万人の新規雇用の創出を目標に掲げる。

昨年8月に結成された原子力スキル・タスクフォースによって考案されたこの計画は、業界の労働力をほぼ50%増加させ、原子力部門が魅力的で長期的なキャリアの選択肢となることを目指している。

この計画に係る活動は、原子力スキル提供グループ(Nuclear Skills Delivery GroupNSDG)によって実施される。国防を維持するとともに、強靭なエネルギー供給体制を構築し、経済発展の促進、2050年までのネットゼロ目標の達成に向けた原子力プログラムを支援する。NSDGは、民生・軍事の両部門において原子力スキルを主導する組織体。

同計画の具体的な活動は以下のとおり。

  • 2025~2026年までに、溶接、電気、エンジニアリングなどの職種の実習生を倍増する。
  • 2025~2026年までに、原子力部門に就く大学生をスポンサーシップと奨学金制度によって倍増するとともに、最高レベルの技術スキルと知識の確保のため科学・核分裂分野の博士号の取得者数を4倍に増やす。
  • 将来の幹部職員を育成するためのスキームを作成する。
  • 中途で原子力部門に入る人材のスキル向上に取り組む。
  • 全国的な広報キャンペーンである「Destination Nuclear」を通じて人材募集と原子力部門の多様なキャリアの機会を紹介する。
  • 地域の要件に合わせた労働力とスキル向上のため、地域ハブを創設する。
  • 原子力部門の研修能力を向上する。
  • 従業員の多様性の受け入れを拡大する。

NSDGの原子力スキルプログラムを統括するB.プレザント氏は、「スキルの課題は、原子力部門が協力し合うことによってのみ達成が可能。だからこそ、計画には業界が現在取り組む特定テーマやプロジェクトが盛り込まれている。また、この計画には、原子力の民生部門と軍事部門を横断したスキル調整も含まれる」とし、原子力部門の地域的なニーズに関連した人材の採用を強化、教育レベル全体で受入れを拡大、既存の業界専門家のスキル向上を図り、多様性を拡大することで、原子力産業の長期的な能力維持と国家とエネルギー安全保障に不可欠な、意欲ある労働力を原子力部門に確保する意向を示した。

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