ノルウェー オフグリッドのSMR建設を計画
03 Jun 2024
データセンターに隣接するSMRと電解プラントの完成予想図 ©Norsk Kjernekraft
ノルウェーの原子力プロジェクト会社であるノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)は5月16日、電力や熱を必要とするデータセンターや水素製造などの産業向けに小型モジュール炉(SMR)を送電網に接続せずに利用する「オフグリッド」で建設する計画を明らかにした。
同社は、「オフグリッド」のSMRを電力と熱を必要とする工業地帯に隣接して設置、送電網整備を不要とすることで、プロジェクトの経済性を向上させ、産業の育成と雇用創出、経済成長の実現を図るとともに、ノルウェーの自然環境を保全しながらゼロエミッション目標の達成を目指すとしている。なお、「オフグリッド」のSMRの採用は大規模な送電網インフラがすでに存在する、あるいは計画されている場合など、送電網への接続が合理的な場合を除く。
同社によると、再生可能エネルギーは土地面積や天候によって発電量は制限されるが、オフグリッドSMRは広大な土地面積を必要とせずに発電量を増やすことができ、継続的な経済成長が保証されるという。例えば、ノルウェー中部のフォセン陸上風力発電プロジェクトを構成するロアン風力発電所とストルヘイア風力発電所の占有面積は62km2。GE日立社製のSMR「BWRX-300」の占有面積は0.05km2で、天候に左右されることなく37%増の電力を供給できる。また、オフグリッドSMRは電力・熱を必要とする工業地帯に直接隣接して建設が可能。水力発電と同様に、運転期間は100年(運転開始60年後と80年後にバックフィット作業を実施)で、20~25オーレ(約3~3.7円)/kWhと安価な電力を供給できる。一般に、オフグリッドSMRは電力の他、大量の熱・高温蒸気を消費する産業で採用され、鉄鋼、アルミニウムの他、炭素回収、水素、アンモニアなどの生産、余熱は地域暖房に利用が可能といわれている。ノルウェーは冷涼な気候で治安も良いことから、データセンターの設置にとっては魅力的なロケーションだろう。
実際、米グーグル社はノルウェー南部のシーエン市にデータセンターを建設中である。今後20年間に84万kWの発電設備容量を必要としており、ノルウェーのT.アースランド・エネルギー相(シーエン市出身)は同市内での発電設備の必要性を訴え、同市は原子力発電導入の検討を表明している。
ノルスク社は、データセンターに隣接して30万kWe規模のSMR×3~4基を建設することで、サッカースタジアム2~3個分の面積で、年間75億~100億kWhの電力供給が可能であるとし、これはデータセンターと水素製造の電解プラントの操業に十分な量であるとしている。また、これをノルウェーの複数の場所に設置し、ゼロエミッション目標の達成と今後数十年間の経済成長への期待を寄せる。同社は今年4月末、「欧州SMR産業アライアンス」のメンバーとして承認されている。
なお、ノルウェーの2022年総発電電力量は1,468億kWhで、内、水力発電が88%、風力発電が10%のシェアを占め、ほぼ再生可能エネルギー利用である。