スロベニア クルスコ増設の経済性を評価
03 Jun 2024
JEK2完成予想図 ©GEN energija
国営スロベニア電力(GENエネルギア)は5月21日、同国の電力研究所と共同で、クルスコ原子力発電所の増設計画(JEK2プロジェクト)に関する経済性評価を発表した。
出力100万kWe~240万kWe規模の増設プラントをスロベニアの電力システムへ接続した場合の安全性・安定性解析を実施し、電力網への影響の観点から、JEK2プロジェクトの最適な設備容量は最大130万kWeであると結論づけた。なお、JEK2プロジェクトのオーバーナイトコスト[1]金利負担を含まない建設費は100万kWeのプラント増設で93億ユーロ(1.59兆円)、165万kWe増設で154億ユーロ(2.63兆円)と試算されている。
GENエネルギアは5月20日、関係省庁にJEK2プロジェクトの国家空間計画(DPN)の草案を提出。今後、これら省庁による調整後、一般公開、DPN開始に関する政府決定を経て、環境影響評価を実施する。2028年までに最終投資決定(FID)を行い、2032年に着工したい考えだ。GENエネルギア社単独ではJEK2プロジェクトの資金手当はできず、国の役割が重要であるとしている。
JEK2プロジェクトは、スロベニアの脱炭素化と電力の自給自足を可能にし、少なくとも60年間(運転延長の場合は80年以上)、電力を安定供給する。10年間で推定5,640人の新規雇用の創出、投資総額の37%以上は国内で調達される見込みで、スロベニア経済への好影響が期待される。
GENエネルギアは、今年後半に実施される国民投票に先立ち、JEK2プロジェクトについて広く国民の意識を高め、情報にアクセスできる取組みとして、今月にクルスコ市内に情報センターを設置するとともに、今後数か月間、同プロジェクトやエネルギーに関する対話型の巡回プレゼンテーションを実施する予定だ。また、同プロジェクトに特化したウェブサイトやメディアを通じて情報提供に努めるとしている。
なお、GENエネルギアのD.パラバンCEOは2023年10月、JEK2プロジェクトで当初予定していた110万kWe規模の増設計画を変更し、最大240万kWeまたは2基の建設計画を表明していた。同時にJEK2の主契約者の候補として米ウェスチングハウス(WE)社、フランス電力(EDF)、韓国水力・原子力会社(KHNP)の3社を挙げている。
スロベニアでは現在、クルスコ原子力発電所(PWR、72.7万kW×1基)が運転中。1983年1月に営業運転を開始して以来、スロベニアの電力の約40%を供給している。同発電所はGENエネルギアと隣国クロアチアの国営電力会社のHrvatska elektroprivreda(HEP)が共同所有しており、2023年1月には、2043年まで20年間の運転期間延長が認可された。
脚注
↑1 | 金利負担を含まない建設費 |
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