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韓国 2038年までに大型炉とSMRの新設を計画

07 Jun 2024

桜井久子

新ハヌル1、2号機(各APR1400)。2号機(右)は今年4月に営業運転を開始。  ©KHNP

韓国の産業通商資源部(MOTIE)の諮問委員会は531日、「第11次電力需給基本計画」の草案を発表した。草案によると、2038年までに大型原子炉を3基と小型モジュール炉(SMR)を1基建設する計画である。

電力需給基本計画は、エネルギー政策に関する2年ごとの政府の青写真。今回の計画は2024年~2038年までの15年間を対象とした電力需給の長期展望、発電設備計画などが含まれる。無炭素電源の大きな軸である再生可能エネルギーと原子力をバランスよく拡大することで、カーボンニュートラルに積極的に対応するとともに、化石燃料の海外依存度を減少させ、エネルギー安全保障を強化させる考えだ。草案は、環境影響評価、公聴会、国会を経て正式に採択される。

MOTIEが原子力発電所の新設計画を作成したのは2015年以来のこと。新ハヌル原子力発電所34号機の新設計画は、2015年の「第7次電力需給基本計画」で承認されていたものの、2017年ムン・ジェイン(文在寅)前大統領の政権下で、脱原子力政策である「エネルギー転換(脱原子力)ロードマップ」と「第8次電力需給基本計画」に基づき、建設計画は一時白紙化されていた。2020年5月に就任したユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の現政権下で同機の新設計画が再開された。

草案は、2038年の電力需要を12,930kWと算定。2023年と比較して約30%の増加となっている。経済成長、気候変動の影響、産業構造及び人口変化の見通しの他、半導体クラスターの造成などで今後投資急増が予想される半導体産業、人工知能(AI)の普及で大幅な増加が予想されるデータセンター、産業部門を中心とした電化による電力需要を考慮。特にAI普及の影響で、半導体ならびにデータセンターの電力需要は2030年には2023年の2倍以上に増加すると予測されている。

2038年に目標とする電力設備容量については、発電設備の故障、建設遅延の可能性など、電力需要予測に適正な予備率(22%)を考慮し、15,780kWと算定。一方、再生可能エネルギーの普及見通しと火力、原子力発電などの建設及び廃止計画などを反映した2038年の確定設備容量予測は14,720万kWであるため、1,060kWの発電設備が不足になるとしている。この不足分を大型炉、SMRLNGコジェネや水素発電などで賄う計画だ。年毎の確定設備容量と予備率を考慮すると、2031年以降から発電設備の不足が予想され、2035年~2036年の期間には、220kWの新規設備が必要とされている。この期間に70kW分を割り当て、現在開発中のSMR実証炉×1基の運転を計画、残りの150kWは無炭素電源の導入を検討している。また、大型炉の場合、サイト確保などの期間を含めて167か月(1311か月)の建設期間が必要と予想されるため、2037年以降の2037年~2038年の期間に、計440kWの新規導入を計画。1基あたり140kWAPR1400の場合、最大3基の導入となるが、実際の建設基数は、サイト確保に要する期間や所要費用などを総合的に勘案し、政府が事業者との協議を通じて最適な計画を導き出すことが望ましい、と勧告している。

なお、草案では、電源構成の容量ベースの具体的数値は示されていないが、電源別発電量とシェアの予測はされており、2038年の原子力発電電力量は2,497kWh、シェアは35.6%となっている。なお、2023年の原子力発電電力量は1,714kWh、シェアは31.5%であった。

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