原子力産業新聞

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ガーナ 米国協力でSMR導入をさらに推進

10 Jun 2024

桜井久子

調印式。後方、右から2番目にA.ガンザー米国務筆頭次官補代理 ©U.S. Embassy in Ghana

米国務省(DOS)のA.ガンザー筆頭次官補代理(国際安全保障・不拡散担当)は5月28日、アフリカのガーナの首都アクラで開催されたアフリカ原子力ビジネスプラットフォーム会合で、ガーナを小型モジュール炉(SMR)地域ハブとすることを含む、新たな民生用原子力協力を発表した。

本発表は、2022年10月に国際原子力機関(IAEA)が米国で開催した原子力閣僚会議で米・日・ガーナの3か国が結んだガーナのSMR導入に向けた戦略的パートナーシップに基づくもの。ガーナがアフリカにおける最初のSMRの運転者となり、将来のSMRサプライチェーンのニーズを支える同国における人材育成と雇用創出を支援する。

ガンザー筆頭次官補代理は、R.オルソン米臨時代理大使とともに、「SMR技術の責任ある利用のための基盤インフラ(FIRST)」プログラム促進を目的とする、ガーナにおける米国SMRの安全で確実な導入を進めるための主要取決めの調印式に出席した。

取決めのひとつは、ガーナ原子力委員会(GAEC)における米ニュースケール・パワー社のニュースケール・エネルギー探査(NuScale Energy Exploration(E2))センターおよび関連サービスの提供に関する了解覚書(MOU)と契約取決め。MOUはGAECとカザフスタンに拠点を置く国際科学技術センター(ISTC)、契約取決めはGAEC、ISTC及びニュースケール社により調印された。ガーナでのニュースケールE2センターの設立は、ガーナおよびその他の地域でのSMR導入に向けた人材育成の重要なツールとなるとしている。E2センターはFIRSTプログラムの資金提供を受け、最新のコンピュータモデリングを使用したニュースケール社のSMRを12基設置する発電所「VOYGR-12」運転シミュレーターを有し、次世代炉のオペレーターとエンジニアの実践的な育成・訓練施設となる。IAEAのマイルストーンアプローチならびに保障措置に従い、ガーナをアフリカにおける安全かつ確実な民生用原子力導入のための教育・訓練ハブとしたい考えだ。

もうひとつの取決めは、GAECとISTC間で締結された、地域溶接認証プログラムに関する了解覚書(MOU)。同プログラムは、ガーナ人技術者が原子力部門の建設職に就くために不可欠な研修と独自の技能セットを提供するもの。FIRSTプログラムの資金援助を受けており、ガーナをアフリカ地域におけるSMRサプライチェーンの一部として確立することを目指している。

これらに関連して、ガーナ原子力発電公社に代表されるガーナ政府は、ニュースケール社製SMRの発電所を主要なエネルギー源として利用する産業エリアを開発するために、プロジェクト開発者である米レグナム・テクノロジー・グループとの協力合意締結に向けた作業に取り組んでいる。米政府は、プロジェクト開発者である同グループを通じたニュースケール社製SMRの導入を強く支持し、協力合意の締結への期待を表明している。

なお、米国は現在、ガーナと原子力協力協定(通称123協定)を交渉中。これは、米国から原子力発電を中心とした民生用原子力関連投資、原子力機器や資材の輸出を可能にする法的枠組みである。

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